エドガーさん(35)
♪ 真っ赤なおっ鼻の〜 エドガーさっんはーー
♪ いっつも みんなの 笑い者〜〜
♪ でもっ その年の〜 クリスマスの日ーーー
♪ ドノバンの おっじさんは 言いました
「こら、エドガー!! お前、また酒を飲みすぎやがって!!
これじゃあ航海出来ないじゃないか! いい大人なんだから
気をつけろッ!!」
「ひぃぃぃぃ、すみません、すみません、すみません……ヒック」
♪ いっつも酔ってた エドガーさんは〜〜 今度こっそはと〜〜
「わ、わたくし、禁酒したいと思いますッ!!」
♪言っちゃいました〜〜
<禁酒宣言>
「わたくし、禁酒したいと思いますッ」
エドガーの声が甲板に響いた。
場に居合わせた全員が間髪入れずに無理無理、と手を振った。
「何日もつやら……」
「何時間の間違いだろ?」
「何分の領域だって」
「何秒じゃない?」
言われたい放題。
「大丈夫です、わたくしだって大人です。頑張ります」
そこに現れたのは……
「みんなでなんの話をしてるんだナ?」
「おう、ダイク。エドガーの話をしてたんだ」
ダイクはエドガーに話があったようで、彼に向き合った。
「エドガー、次の港で、新春に飲むお酒を一緒に探すんだナ。エドガーに期待してるんだナ」
「いぇい、お酒ーーーーーーーーッ!!!」
──── 禁酒終了 ────
「おい、何分だった?」
ガストンに聞かれ、ストップウォッチを持ったビリーが顔をあげた。
「1分23秒でした」
早ッ!
<仕分け人>
その日、食堂では全員集合し、大事な会議が行われていた。
シャキーン☆
「オイラの名はダイク。人呼んで『必殺・仕分け人』。ということで、ダカート号の予算編成の
見直しをしていくんだナ」
ダカート号紹介……船首に大きな竜の頭を模した像をつけた大型船。昔は、海賊業で
生計をたてていたが、今は廃業し、トレジャーハンティング船として
航海を続けている。慢性的な赤字。
「機関室の予算は減らさんでくれ! ダカート号の動力源だぞ!」
「医務室への予算だって。病人が出たらどうするんですか!」
「航海図や気圧計などの備品をケチって遭難することになっても責任は取れないぞ」
「大砲の維持費だって残しておいてほしいし!」
「甲板だって、ロープや帆とかボロボロになるまで使ってるんだ」
みんな一斉に懇願する中で。
スッと手を挙げたのは、ベルだった。
ベル=食費 ゴクリとみんなが唾を飲む。楽しい食事の予算を減らされるのはキツイ!
ベルは静かに言った。
「エドガーの酒代を減らせばいい」
みんなの目が輝いた。 よっし、それがいいッ!!!!!
「ま、待ってください!!」
ダカート号の予算のことなんて関係ないと、隅っこでウトウトしていたエドガーが「酒」という
単語を聞いて、慌てて立ち上がった。
「お酒、お酒がないと、わたくし死んでしまいますぅぅぅ!!」
慢性アルコール中毒男。
「でも、今、一番、予算的に削減できそうなのは、そこなんだナ」
「やめてください! それを言うなら、おやっさんのタバコ代でしょう! 増税が来ますよ!」
「ふざけるな! だったらカーティスが女に貢ぐ花束代を削減したらいいだろう!」
「なッ! それならボスの怪しい文学の本買うのやめてもらおうじゃないですか!」
「ちょ……! 私のを言うなら、あなたたちだって、エロ本隠してるの知ってるのよー!」
大事な会議がこういう言い合いになるのは、日常茶飯事。
わいわいがやがや。
後ろのほうで眺めていたアイナとモンバがため息をついた。
「あたいらのお小遣いは保留だよねー」
「あぁいう大人にはなりたくないッス……」
<医務室>
その日、ベルはランバートのところに来ていた。ベルは椅子に座ると、寒そうに
手をこすり合わせた。
「最近、手足が冷えてね。眠れないぐらいなんだよ。冷え性かねぇ……」
「そうですか、漢方とかがありますけど……。あ、養命酒なんてどうですか?」
ドカッ ←勢いよく誰かが入ってきた音。
「お酒の話でっすか〜〜〜?」
「「違います(怒)」」
<続・医務室?>
その日、エドガーはランバートのところに来ていた。
「お酒をやめると手が震えて、まともに舵が握れなくなるんです。飲んでないとダメなんです」
ランバートは、ため息をついた。
「すみません、手遅れです。死ぬしか治る方法はありません」
ガバッ
「はぁはぁ……。なぁんだ夢か……。 いや、あながち夢でもなさそうだ」
<達人>
ついにエレナが立ち上がった。
「エドガー、あなたちょっと飲みすぎよ! 控えなさい!!」
「ボス……。ボスは、『酔拳』というものをご存知ですか?」
酒瓶片手に神妙な面持ちのエドガーに、エレナは眼を丸くした。
「酔拳って……あの『酔えば酔うほど強くなる』という拳法のこと!? エドガー、あなたが
その拳法の使い手だなんて!!!!」
「だったらいいですねーーーーー。えっへへへへへーーーーーーーー。ヒック」
「ホーリーバーストッ!!!」
その日、ダカート号は大きく揺れた。
「エドガーは、みんなにズタボロに言われても立ち直るのが早いッスね〜」
甲板の掃除中。舵輪のところで、エドガーにそう言ったのはモンバだった。
「オイラも、よく怒られるッスけど、エドガーは怒られても怒られてもお酒をやめないッス」
「信念を貫くということだ」 キラリーーーン☆
↑たぶん違う。
モンバは舵輪を見つめた。それに気づいたエドガーがスッと体を引いた。
「ちょっと握ってみるかね?」
「い、いいッスか!?」
「みんなに内緒で、少しだけな」
そう言われ、モンバは舵輪を握らせてもらった。意外にずっしりと重い。
「かじ取り」を任せられているエドガー。彼の腕は認められている。なんだかんだ言ってもやっぱり、
ダカート号に彼は必要な存在なのだ。
「オイラの住んでいたクロコネシアって村には、『レムナス』っていう伝説の船があって、
オイラ、いつかレムナスの舵を取るのが夢なんッスよ」
うんうんと、エドガーはうなづいた。
「それまでは、このダカート号で修業を積むといい。きっと、モンバなら良い船乗りになれると
思うぞ。
そして、大人になったら、一緒に酒を飲もうな☆」
「うっわー、船長ーーーーー!
エドガーがオイラの将来に変な期待をしてるッスよーーー!!」
ダカート号は、エドガーの舵捌きで、今日も大海原を行く。
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