「まえがき その2」の答え合わせ
1587年8月──
大阪城、大広間にて豊臣秀吉が大名たちを招きお茶会を開いていた。
その中で豊臣秀吉が大名たちにこう尋ねた。
「あなた方の家宝の話を聞きたいのう。どんな宝物をお持ちかな?」
大名たちがそれぞれに壺や太刀、茶器などと答える中、1人黙っている
人物に豊臣秀吉は声をかけた。
「おや、先ほどよりあなた1人何を黙っておられるのかな? さぁ、あなたの
宝はなんですかな?」
「はっ。ご存知の通り、私は三河の田舎者。皆様のような豪華な宝物を
持ってはおりませぬ。 ただ……」
「ただ? ただなんと申される?」
秀吉に聞かれ、その人物──徳川家康はこう答えた。
「はい、自分のことより私の身を心配してくれる者。
私のためならたとえ火の中、水の中、命も惜しくないと申す者、
私のことを心の底から慕ってくれる者がおります。
そんな心やさしく命知らずのかわいい者たち、私にとっては
かけがえのない家族と同じです。
私の何よりも大切な宝物、それは私の家臣でございます」
その答えに、秀吉はうなづいた。
「そのような宝、ぜひともわしも欲しいものじゃのう。ほっほっほ」
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