第7話  ガミガミ魔王城1、対決・ガミガミ魔王ッ!
─ そ の 1 ─




 ──ガミガミ魔王の城。

 ポポロクロイス城より遥かに大きいこの城は、誰でも自由に出入り出来る
わけではないらしい。正面の鉄で出来た重い扉は固く閉ざされている。
 その1つしかない入り口で、鉄の棒を持った見張りのデフロボが澄ました
顔で誰も通させまいと扉をふさいでいた。
 エレナたち4人が絡むようにそのデフロボを取り囲む。
「こんにちわ。ガミガミ魔王さんはいらっしゃるかしら?」
「いるデフよ」
 とりあえず、丁寧なエレナの言葉に丁寧に答えるデフロボ。
「話があるの。中に入れてくれないかしら?」
「ダメデフね。ここから先、関係者以外立ち入り禁止デフ」
 デフロボは棒で入り口をふさぎ、ガンとして通さない様子だ。依頼者のサル
たちも、どうやらこのデフロボのせいで中に入れなかったようだ。ここは穏便に
いこうと思ったが、力で解決した方がいいかな、と思い始めるエレナ。
「関係者よ。伝えてちょうだい。ピエトロの妹のエレナが来たって」
「無理デフね。魔王サマの命令でピエトロの知り合いは通してはいけないと
 言われているデフ」
 そう言われ、エレナは別の言い方をした。
「・・・・・・じゃあ、ナルシアの妹が来たって伝えてくれるかしら?」
「ナルシアさんのお知りあいデフか。ささ、通ってくださいデフ」
 まるで「ナルシア」という言葉が魔法の呪文だったかのように、あっさりと道を
あけるデフロボ。虫が飛ぶようなブーンという音と共に城の入り口が開く。
「おー、開いた」
「すごいじゃん、エレナ姫」
「・・・・・・。この先、常識外れなことばかり起こるわよ。気をつけて」
 エレナたちは改めて気合いを入れなおすと、城の中へと足を踏み入れた。



 城の中は案の定と言うべきか、素晴らしきガミガミシティが作られていた。
たくさんの老若男女のデフロボたちで賑わっている。
 たくさんのネオンが輝く大都会裏通りを思わせるデンジャラスな場所もあれば、
昭和ン十年代の日本の片田舎を思わせる場所、アフロヘアのイカしたデフロボが
エレキギターで派手な演奏を奏でたり、小さなデフロボがビー玉を飛ばして遊ん
だり、全てが「新しい」とは言えない懐かしさを残すフロアが続く。
「なんだよ、ここ」
 始めてのバファンは、最初は警戒しながらエレナたちのしんがりを勤めていたが、
この場所に危険は無いと判断し、今ではポケットに手を突っ込みながら胡散臭そーに
キョロキョロと周りを見回しながら歩いている。ラリスとリリスもラーメン屋を経営するデフ
ロボのチャルメラを吹かせてもらったり、実に楽しそうだ。


「あぁ、エレナさん! 久しブリでフ〜!」

 大声で駆け寄ってきたあるデフロボにエレナは眉をひそめた。タキシード姿の
デフロボがエレナの前に立つ。
「シゲルデフ! 海王丸でいつも段上のワテの漫才を面白そうに見ててくれた
 やないでフか。あの時の熱い視線をワテは忘れてないデフ!」

「・・・・・・(-.-)」
 ──全く見た覚えはない。

「そ、そうだったかしら?」
「これからワテのワンマンショーが始まるデフ。是非、ワテの漫才にエレナさんの
 フリックの華麗な蹴りツッコミを入れてやってください」
「ごめんなさい。そういう趣味はないのよ。他をあたってくれるかしら?」
「はーいっ! じゃあ私がツッコミを入れますわ」
 と、リリスが可愛らしい笑顔で、指の関節をボキボキと鳴らした。準備運動
がてらのシャドウキックは早すぎて普通の人間には見えない。
「なんでやねん! ……こーんな感じでいかがですか?」
 コツンと、軽く電柱相手にツッコミを入れてみたリリス。その電柱が真っ二つに折れ、
ドス−ンッと勢いよく倒れる。
 サー−ッと青ざめるシゲル。
「ま、また今度にするデフ。そうそう、あそこのお土産屋に行ったらどーです?
 ほなさいならー」
 一体何をしに現われたのか、物凄い勢いでシゲルは去っていった。



「いらっしゃいデフ。お城が自爆する前に買っておいたほうがいいデフよ」
 シゲルに言われ、入ったお土産屋。その店には、かわいくない人形や、意味不明
な気合の入ったペナントや、絶対にカバンにつけたくないキーホルダーや、消費
期限ギリギリの饅頭や、某ポポロTシャツも、いろいろ揃っていた。
 エレナは店内を物色することはなく、ピエトロの皮の財布を取り出すと、店主デフ
ロボにサラリと言った。
「全部1つずつちょうだい」
 驚いたのは以下3名。
「おいおい、ねーちゃん」(ズビシ)
「全部買うおつもりですか?」(ズビシ)
「ブラコンもいい加減にしとけよ・・・・・・(ドカッ)・・・・・・ぐはっ」(倒)
「毎度ありデフ」
 代金を支払いながらエレナは店主デフロボに尋ねた。
「ねぇ、ついでにガミガミ魔王さんの居場所も教えてくれないかしら。無意味に
 このお城広くてわからないの」
「それは言えないデフ」
 そう言われ、がっくり肩を落とすエレナ。
「・・・・・・やっぱり自分たちで探すしかないみたいね」
「言えないデフが・・・・・・」
 店主デフロボはお釣りと一緒に4枚のチケットをエレナに手渡す。そこには
美化されたガミガミ魔王のイラストが描かれていた。
「魔王シアターの入場券をサービスするデフ。見るといい事があるデフよ」



 お土産屋のデフロボに言われ、不信感を抱きつつ、エレナたちは町内の案内板と
いう壁に貼られた地図をたよりにシアターへと足を運んだ。
 魔王シアター入り口のポスターに描かれているのはナルシアとガミガミ魔王、それ
からピノンと、後はオマケのようにピエトロ王。そんなポスターが右の壁から左の壁まで
ズラズラズラズラズラズラァーーーーーーーッと一面に貼られている。
客を呼び込むデフロボや、上映中に食べるポップコーンやジュースを売るデフロボを
中心にたくさんのロボットたちで賑わっている。
「・・・・・・ま、いいわ。とりあえず入りましょう」

 チケットを片手に軽い気持ちでエレナたちは魔王シアターに入った。





  



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