第6話  いざ雪原へ、北の大地から’05
─ そ の 3 ─




 極寒の北の大地で、エレナたちの前に現われたのは・・・・・・。


「ウキ」
「ウキャキャ」
「ウッホッホ」
「ウッキー!!!」


 サル、である。前回からドキドキして待っていた画面の前の読者の皆さんに
失礼だな!と思いながらもエレナたちはとりあえず胸をなでおろした。
 エレナたちを取り囲むようにして現われたサルたち。軽く30匹はいるだろう。
氷の山から見下ろすようにエレナたちに視線を送っている。
「な、なに、なんなの!?」
 サルたちがじわりじわりと包囲網を縮めてくる。4人が背中を合わせて身構
える。
「なんなんだ? このサルたちは・・・・・・」
「身包みはがされそう・・・・・・」
「ここは友好的におしくらまんじゅうをしましょう、トカ・・・・・・」
「もう、サルにはこりごりだって言ってるのにッ!」
 ダカート号を降りて、ドンとゴンと一緒に戦った第1話を思い出すエレナ。

「ウッキ!」
 サルは背後からとあるものをエレナたちに見せた。

「あーーーーーーー!」
 白い村の宿屋に置いてきたエレナのトランクに、双子のカバンである。前に
チラつかせ、不敵に笑う。
「私たちの荷物が・・・・・・」
「勝手になに盗んでるのよッ!」
「人質・・・・・・いや、物質だな」
 荷物など持っていない、物質を取られていないバファンがサラリと解説する。
荷物をサルたちに取られ、サルたちはエレナに何を要求するというのか・・・・・・。
「ウッキーーーーーーーーーーッ!」
 かかれー! と、1匹のサルが合図を送るとサルたちが一斉に4人に飛び
かかった。
「キャーッ!」
 と、身構えてみたものの、サルたちが襲ってくる気配はない。
 そっと目を開けると、そこには木で出来たお神輿風の乗り物があった。
「おみこし?」
「ウキャ−!」
 動物の言葉はわからないが、『乗れ』と言っているらしい。どこかに連れて
行く気のようだ。
「どういうことなの?」
「ま、乗っちゃおうよ」
「面白そう!」
 勝手に乗り込むラリスとリリス。そしてバファン。
「ちょっと、あなたたち! ・・・・・・きゃあッ!」
「ウッキ!」
 エレナは後から1匹のサルに蹴られ、無理やりお神輿の中に入れられた。
ついでに荷物も中に放り投げられ、エレナたちの元に返ってきた。

 そして、お神輿は、えっさえっさとサルたちに担がれ、動き出した。






 エレナたちがサルの担ぐお神輿に揺られて1日余りがたった頃・・・・・・。
最初はエレナ以外は楽しんでいたものの、全くくつろげない空間で、さすがに
4人、退屈で息苦しくなってきたらしい。
「ボクたち、どこまで連れて行かれるんだろう」
「出来ればポポロクロイス城がいいわ」
 エレナの言葉にギョッとしてラリスとリリスが顔を上げる。
「さすがにもう戻らないと。にいさまが心配しているわ」
 ラリスとリリスが気まずそうに顔を見合わせる。
 そこに割って入ってきたのはバファンだ。
「よし。だったらオレと一緒に行くか!」
「ちょっと待ってよ」
 エレナがバファンを睨む。今まで楽しく笑いあってきたが、急に重い
空気がお神輿の中に降り立った。こんな話、出来ることならしたくない。
全員がサルたちを倒してでも外へ出たいという気持ちになってきていた。
「バファン、あなたの目的はなに? 2人をどこへ連れて行くつもりなの?」
「言えば、あんたが辛くなる」
 バファンがエレナを睨み返す。
「私はラリスとリリスをポポロクロイスへ連れて帰るわッ!」
 
 ガタンッ

 その音に全員がキョトンとして顔を見合わせる。
 お神輿が止まったのだ。
 ラリスがそっと葉っぱで出来たカーテンを開け、日の光の眩しさに
目を細めた。
「ここって・・・・・・」
「ウッキィ帝国じゃないッ!」
 どおりで暖かいわけだ。サルたちは、北の大地から一気にエレナたちを
ここまで運んできたのだ。
 すでに火ネズミのマントを脱ぎ、普段着になっていた4人は、ウッキィ
帝国に降り立った。バファン以外の3人には久しブリの場所となる。
 耳をすますと、遠くから列車の汽笛が聞こえる。無事に運行しているよ
だ。サルたちは約束通りイタズラを繰り返していないらしい。
 1匹のサルに案内され、エレナたちは山を登り、洞穴へと招かれた。
エレナはこの場所をよく覚えている。ドン将軍とゴン将軍を従え、ボスザル
に戦いを挑んだ場所だ。ラリスとリリスに初めて出会ったのもここだった。
 中には、先日戦ったボスザルがメスザルに囲まれながら、いいご身分で
バナナを食べている。
「ウキ、ウッキィ。ウキャ」
 ボスザルが手を振り合図を送ると、他のサルたちが葉っぱで作った
座布団を4枚持ってきた。『座れ』とのことらしいので、とりあえず
座ってみる。目の前にフルーツの盛り合わせが置かれ、妙な待遇にどう
したらよいか不安になるエレナ。

 ボスザルは、大きく手を広げ、話し始めた。

「ウキ、ウキキキキ。ウキャ。ウッホー、ウキ。
            ウキャキャキャ、ウッキーーー!」


「何を言ってるのか全然わからないわ^_^;」
 苦笑するエレナ。こういう時、マルコの母であるレオナがいてくれればと
切に思う。彼女は動物の言葉がわかるからだ。
「でも、なんか助けて欲しいみたいだよ」
「えぇ、私にもそう見えます」
 ラリスとリリスがボスザルの話を理解しようと必死にボスザルのジェスチャーを
見ている。エレナはバファンと顔を見合わせ、ため息をついた。


 しばらくして、一通り話は終わったらしい。ボスザルは立ち上がるとエレナたち
を帝国の南へと連れ出した。
 ウッキィ帝国中心地は、鉄道の走る場所は平原なのだが、帝国の南のほうは
深い森が続いている。その中をエレナたちは進む。
 森を抜け、少し開けた場所にあるその建物に、エレナは「あっ」と短い声をあげた。

 のハイカラーがメインのガラクタで作られた城がそこにあったのである。

 必要以上に森を切り開き、公害よろしくモクモクと煙を出し、ガタゴト大きな
音を出す全く意味があるのかわからない巨大な鉄の城。城の周りには鉄板や
ネジやとにかくガラクタが散乱している。
「この城って、やっぱりあの人の?」
 エレナはサルたちが自分たちに助けて欲しいという理由がようやく
わかった。

「まさか、こんな所に城を築いているなんて、恐るべし、ガミガミ魔王」

 城を見上げてエレナは重々しくため息をついた。
「ガミガミ魔王って、ポポロクロイスを襲撃したロボットに乗ってたオジサン
 だよねー」
「えぇ、そうよ」
「ウッキ、ウキ、キキー!!」
 サルたちはその城を邪魔そうに睨み叫ぶ。ブーイングの嵐だ。
ウッキィ帝国の領地を列車が走ることは了承は取れているが、この城の
建設はもちろんウッキィ帝国の了承は取れていないのだろう。
 なんとかして欲しいとサルたちはエレナたちの元を尋ねてきたのだ。
「わかったわ、この城に立ち退いてもらえばいいのね」
「ウキッ!」
 ボスザルがうなづく。初めて会話が成立した。サルたちにここまで信頼
されているとは・・・・・・なんとも意外である。
「いいわ、ガミガミ魔王さんと話して撤退するようにお願いしてくるから」
 と、剣を抜きながら話すエレナにはたぶん話し合いをする気はないのだ
ろう。

 サルたちの熱い声援の中、エレナたちはガミガミ魔王の城へと乗り込んだ。




  


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