明日へつなぐ今が・・・・・・
          旅立ちの時だから


Run Kakko presents 「ポケットからレッドカード4秒前」



エンディング




「さいなら、エレナ姫。 そして、さいなら『楽園の君へ』〜〜ッ!!」

「シゲル、目から水が漏れてるデフよ。医務室へ行っ……」
「ウッサイ! お前にワテの気持ちがわかってたまるかーーーーーッ!」
 猛ダッシュでコントロールルームを飛び出すシゲル。彼に言葉をかけてやる
勇気のあるロボットは他にはいないらしい。
「……。なんデフかね、あいつは。それにしても、2人がいなくなった途端、
 静かになったデフね〜」
 空王丸のコントロールルームはエレナとバファンが居なくなったおかげで、
ものすごく静かになっていた。機械の音が響くのみだ。
 無口になって前方を睨んでいたガミガミ魔王は疲れたようにヒゲをさわった。
「まーったく。今回は何の収穫もない冒険だったな」
「そーでもないデフよ?」
 デフロボがガミガミ魔王の前に1枚の小さな紙をチラつかせた。
「ん? なんだ、それは」
「エレナさんに、魔王様へ渡すように頼まれてたデフ」
「だから、なんだよ」
 デフロボからその紙……写真を奪う。
「こ、これはナルシアちゃんの生写真! まったく、やるな。あのブラコ
 ン娘め……」
「とか言って、ちゃっかりポケットにしまわないで下さいデフ」
 ガミガミ魔王はポンッと膝を叩き、立ち上がった。
「んじゃ、行くか!」
「どちらへ?」
「俺様の向かうところへ、だ〜〜〜! 全速前進!!!」
「はいデフ〜〜!!」

 空王丸はポポロクロイス上空に飛行機雲を残し、空の彼方へと消えていった。

色のない世界で見た虹に 悲しくて 涙あふれた
  小指でかわした約束  いつかきっと叶えると誓った場所

 神様の試練も 竜のイタズラも  
  越えていける自信があるの   南風 春を運ぶ 音がする

 ししのかんむり 飛び越えて 
   たどりついた草原には ほら・・・・・・希望の花が 咲いている 


 空へと向かうラリスとリリス。
 ラリスはふとリリスの持つ袋に目を留めた。
「そういえば、リリス。ナルシア王妃に何をもらってたんだ?」
「え、これ? 鉢植えよ。花をわけていただいたの」
「花ぁ?」
「そう! お城に帰って植えなおすの。私、決めたわ。空の国をお花で
 いっぱいにするの!」
 リリスが目をキラキラと輝かせ、うれしそうに語る。
「……似合わね〜」
 ラリスの言葉にカチンときたリリスが一発蹴りを入れようと空中で一回転した。
それを間一髪のところでラリスが杖で受け止める。
 リリスはため息をつくと、足を引っ込めた。
「ラリスは?」
「は?」
 突然聞かれ、ラリスは眉をひそめた。
「だから、ラリスには夢はないの?」
「夢……か」
 ラリスは上を見上げる。もうすぐ雲の上だ。
「ボクはピアニストになる。うん、人の心に響くメロディーを奏で続けるんだ」
「ぷっ」
「あ、なんで笑うんだよ!?」
「だって、ラリスって音楽が大嫌いだったじゃない」
「それは、『再生力』に縛られていたからだ。ボクたちにはもう力はない。
 力はないけどボクたちには未来がある」
「1ヶ月前には夢にも思わなかった」
 ラリスとリリスはうなづく。
「いつも2人1組で扱われてきたボクたちだけど……」
「これからは別の道を歩いても、誰も文句は言わないわ」
 ラリスとリリスは手を握った。
 雲を突き抜ける。──目の前にあるのは天空城。
 2人は城へ向かって走り出した。
音のない世界でうたう歌は 私に勇気 与えてくれた
  旅に出てわかった魔法(こと) 奇跡、きっと起こせるこの手で

 絶望の祈りも 時のタタカイも
   争いよりも手を繋ごうよ   春風 花びらが 草原を舞う

 白い魔法を 七色に変えて
   変わりはじめた世界には ほら・・・・・・希望の花が 咲き始める

「あーーーもう! びっくりしたーーー!!」
 エレナは冷や汗をぬぐった。
 空王丸から落とされ、まっ逆さまに落ちていったエレナとバファンだったが、
座っていたイスがパラシュートとなり、2人はゆっくりとポポロ草原に降り立っ
たのだ。
「まったくもう!」
 仰いだ空には、彼方へと消えていく空王丸の姿……。
「今度会ったら、文句言ってやるわ」
「また会うつもりなのか?」
「会いたくなくても会うわよ。あの人も私と同じものを狙っているんですもの」
 エレナはミニパラシュートから落ちてきたトランクを担いだ。
 辺りを見渡す。
 ポポロ草原は、一面の花の絨毯で覆われていた。
「うわーーー、キレイ〜〜!!」
「春……かぁ」
 バファンは、足元の花を1つ手にとってみた。その姿を見ながら、エレナは
白い村の酒場での出来事を思い出していた。
「ここには幻影じゃない花畑がある」
「そうね」
 黄色い小さな花を手にするバファンに、エレナは頷いた。
「なぁ、エレナ姫」
「なに?」
「……行くのか?」
「えぇ、あなたの剣を探しにね」
「その……オレをあんたの船に乗せてくれないか?」
 バファンは視線を花から大空へと移す。
「結局、ダーナのところも追い出されて、オレには行くところがないんだよ」
「そんなことはないわ。あなたには帰る場所がある」
 自信を持ってキッパリというエレナ。バファンがまじまじと彼女の顔を見る。
「2人のところ、よ。ラリスとリリスの元へ行きなさい。あなたはあの子たち
 が生まれた時からずっとあの子たちを見守ってきた。これからも一緒にいる
 べきだと思うわ。その姿ででもいいし、スミレの姿でも構わない。ボリス
 国王もきっとあなたのことを待ってらっしゃるわ。ほら、あなたにはちゃん
 と居場所があるんだから、ね?」
「……」
 沈黙が流れた。
 やがてバファンは頷いた。
「わかった。じゃあ、ここで別れよう」
「えぇ」
 たぶん……エレナは思う。たぶん、バファンは天空城には帰るつもりはない
のだろう。闇の世界の兵士として、もうラリスとリリスには会わないつもりだ。関わる
必要もない……。なんとなく、エレナにもその気持ちは理解出来た。
 でも、だからこそエレナは乗船を拒み、彼を突き放したのだ。彼が本当に欲し
かった『自由』を求めさせるために。

 エレナとバファンは最後に握手を交わした。
「エレナ姫、あんたに会えて本当に良かったよ」
「ポポロクロイスに感謝しなくちゃね」
「じゃあな」
「さよなら」
 エレナとバファンは互いに背を向け歩き出した。

 風が吹き、花びらが2人の間を舞う。
二度と失わないように 希望の種 
       そよ風よ 世界へと運べ
  
  あなたとの 約束の場所へ
    輝き始めた世界へ さぁ・・・・・・希望の花が 明日へとつなぐ




「……?」
 エレナは立ち止まり、振り返った。
 もうバファンの姿はそこには無かった。彼の去った方から何かが……音楽が
聴こえたような気がしたのだ。 『楽園』が……。
 気のせいだったのかもしれない。もしくは、遠い遠い未来から聴こえてきたのか……。
しばらく花畑を見つめていたエレナだったが、やがて前に向き直った。

「さてと、行きますか!」
 エレナは遠くへ見えるキラキラと光る海へ向けて、ポポロ草原を駆け出した。


・・・・・・希望の花が 明日へとつなぐ……
……



<おわり>

ご愛読ありがとうございました。2006.2.8 括弧るん




  



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