第10話8
「日の国は今日も雨だった」
「ナルシア殿。 拙者、本当にどうしたらいいでおじゃるかッ!?」
「鬼面童子さん、語尾が殿口調になってます。 落ち着いてください」
頭を抱える鬼面童子に対し、ナルシアのほうは別段困った様子でもなく、むしろうれしそうに
ほほ笑んでいた。
「なにはともあれ、エレナちゃんは元気なのね。最近、手紙も来てなかったから、心配していた
の。話が聞けて良かったわ」
そして、この話をピエトロではなく自分が聞いて良かった、とナルシアは思う。ピエトロの耳には
入れないほうがよさそうだ。
鬼面童子は激しく頭を振った。
「殿は、エレナ殿を側室にと希望し、ピエトロ殿の了解が得られなければ拙者、切腹しなければならぬ
のだ! ……というか、もう切腹しかないでござる」
「大丈夫よ。ここは私に任せてください」
そう言うと、ナルシアは辺りに聞こえるように、声を大きくして言った。
「私がエレナ姫のかわりに、殿の側室になりましょう。
……そう殿にお伝えいただけますか?」
「……へ?」
と、そこへタイミング良く現れるのが!
「アノ……、郵便を届けにきたデフが……話の最後の部分だけ聞いちゃったデフよ」
「ま、ま、魔王サマ大変デフーーーーーー!!」
デフロボが慌てて走り去る。
それをナルシアは笑顔で見送った。
「これで大丈夫でしょう。 日の国に帰ったら、きっと殿も諦めていると思うわ」
「そ……そうでござるか???」
「な、なにが起こったでおじゃるか……?」
「殿。里で嫁と子供が待ってるんで、そろそろ帰ります。じゃ!」
「外の国は怖いでおじゃる……。龍とか、もういいから、鎖国するでおじゃるよ」
「ドン将軍から聞いたが、昼ごろ、鬼面童子さんが来てたって?」
「えぇ。もう帰ったわよ。お土産にいろいろもらったけど、見る?」
「うん、見る。 それにしても鬼面童子さん、何しにきたんだろう……」
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