第1話7
「その船の名は、ダカート号ッ!!」
そして、翌朝──
ドタドタドタッ!! バタンッ!
「ご、ごめんなさい! 遅れちゃって!!」
エレナは慌てて食堂に扉を開けた。
昨夜、ドノバンより朝礼があると聞いていたのだ。食堂にはほとんどの
クルーが集まっており、エレナの登場にみんなの視線が彼女に集中する。
「あ、エレナさん」
「おはようございます」
「どうです、よく眠れましたか?」
ドノバンがエレナを席に誘導する。
「えぇ。おかげさまで。寝坊しちゃったわ」
エレナが恥ずかしそうに肩をすくめる。
彼女はフライヤーヨットと呼ばれる船で1人旅をしてきたのだ。頼れるのは
自分だけ。連日緊張しっぱなしで睡眠をろくにとってなかったのだ。
おいしいものを食べて、その後エレナは本当に久しぶりにぐっすり眠った。
おかげで今日は頭もスッキリしている。
「それで、朝礼ってなにをするの? 1人ずつスピーチとか?」
「あ、いえいえ。今日の予定と、今後の航路を話していたところですが……」
バタンッ
と、そこへ、再度、食堂の扉が開かれる。
「おはよーございまーす」
仏頂面で食堂に入ってきたのは、カーティスだった。
「……」
全員、なんとなく、押し黙る。
カーティスは、周りを気にする様子もなく、ツカツカとエレナの前まで歩き、
立ち止まった。
エレナが少し身構える。
張りつめた空気の中、カーティスは表情を緩めた。紳士っぽく胸の前に手を
当てる。
「申し遅れました。私はこのダカート号の航海士をつとめるカーティスです。
目的地をおっしゃっていただければ、どこへでもエスコートいたしましょう」
「ふふ……。私はエレナよ。どうぞよろしく」
あ
あ
popolo
どうなることかと思っていた全員がほっと胸をなでおろす。
しかし、一番心配していたのは、何を隠そう、やっぱり船長のドノバンだったわけで、
ドノバンがカーティスの背中を叩き、ニッと笑った。
「頼りにしてるぞ」
「お任せください」
カーティスも笑い返す。
ドノバンが、手を大きく広げた。
「エレナさん。これで、ダカート号、全員揃いました!!」
エレナは、全員を見回した。
「みんな、よろしくね」
──今日から、ここが私の家。 エレナはうなづいた。
「よーし、野郎ども! 朝飯食ったら出航だーーー!!」
気合いを入れるように、ドノバンが手をたたき、声を張り上げる。
「アイアイサーーー!!」
活気づく食堂で、申し訳なさそうに、トードが手を挙げた。
「あのぅ……エドガーがいないんだけど」
「お゛え゛ーーーーッ。気持ち悪い。飲みすぎたーーーー!!」
「なんでお前が二日酔いしてんだーーーー!!」
「今日の出航やめやめーーーー!!」
ダカート号の物語が今、始ま…る?
第1話 「その船の名はダカート号ッ!!」
おわり
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