カチャッ
なるべく物音をたてないように、ビリーは船員室の扉を開けた。
灯りが弱々しく部屋の中を照らしている。
夜明け前。 しかし、まだ東の空は暗い。
いつもにぎやかなダカート号も、さすがにこの時間は起きている人間は少なく
ひっそりと静まり返っている。
見張り以外の者は眠りにつき、みんな夢の中である。
そんな「見張り」の仕事をしているビリー。
昼間はマストや甲板、夜は船尾通路の見張りをこなす彼は、いったいいつ寝て
いるのだろう……と、ちょっと心配。
「おい、ダイク。起きてくれよ。ダイクってば!」
ビリーは、他の者が起きないように忍び足でダイクの眠るベッドに行くと、彼の名を
小声で呼びながら体を揺すった。
「う、う〜ん……。どうしたんだナ?」
ゆっくりとダイクが目を開ける。
「ダイク。 悪いけどさ、ちょっとだけ見張りを代わって欲しいんだ」
不思議に思って、眠い目をこすりながらダイクはむくりと起き上がった。
ビリーは、苦笑いしながらおなかを押さえる。
「ちょっと腹が痛いんだよ。横になりたいんだ」
「どうせ盗み食いでもしたんだナ」
「違うって! とにかくシクシク痛いんだよぅ!」
雨の日も風の日も頑張って見張りをこなす元気なビリーが見張りを代わって欲しいと
言っているのだ。よほど体の具合が悪いのだろう。
しかし、ダイクは冷たくあしらった。
「……ランバートのところに行けばいいんだナ」
しかし、ビリーも負けないッ!
「いや、ほら。ランバートは寝てるし。今日は朝から健康診断があるじゃん。
ランバートは忙しくなると思うし。オレは、ちょっと寝れば治るからさ。
このとーり頼む。 見張りを代わってください、お願いします!」
ダイクは大あくびして、布団をかぶった。
「ランバートを起こすんだナ」
そう言い、再び眠りにつこうとするダイクの布団を、ビリーはガバッと剥いだ。
「注射が怖いから、医務室はイヤなんだーーーッ!!」
「ビリー。 ランバートにお腹と、頭を診てもらうんだナ」
ダカート号 GO! ゴーゴゴーッ!!
第4話
「健康診断で、ゴーゴゴーッ!」
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