第5話8
「ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」
「し、死ぬかと思った……」
無事に船へと戻ったエレナとモンバは息もたえだえに甲板に倒れこんだ。
「ボス、お怪我はありませんか!?」
「モンバ、大丈夫か!?」
全員が2人に駆け寄る。
「海水を少し飲んだけど、怪我はしてないわ。それよりモンスターは!?」
「ヘイ。逃げて行きました。もう心配ありません」
「そう……」
海は穏やかさを取り戻していた。エレナは甲板に仰向けに倒れ、青い空に
流れる白い雲を見つめた。海の中の悪夢が醒めてほっとする。
エレナは2、3度頭を振ると、ゆっくり立ち上がった。
ランバートがエレナにタオルを差し出す。エレナはタオルを受け取った。
「ありがとう。私は大丈夫だから、先にモンバを診てあげてちょうだい」
そのモンバと言えば、アイナに体を拭いてもらっている最中だった。ちょっと嫌々な
感じでアイナにされるがままになっている。
「あんた見直したよ。勇気あるんだね〜。ま、惚れてあげないけど」
「うるさいッスよ!」
そんなモンバの姿にエレナは安堵する。
「モンバ」
エレナは改めて彼の名を呼んだ。モンバはビクッと震えた。
「ありがとう。あなたのおかげで助かったわ」
「ど、どってことないッスよ」
「それじゃ、私は部屋に戻って着替えてくるわ。みんな、船の点検が終わったら出航よ」
くるりとエレナは踵を返す。
「!!」
それを見たモンバは、慌ててエレナを呼び止めた。
「お願いします!
オイラをこの船に乗せてくださいッ!!」
船体が大きく揺れるほどの突然の大声に、アイナが驚いてモンバから離れた。
エレナが足を止め、モンバを振り返る。
全員が沈黙し、緊張が走った。
あああああ
「オイラ、この船にすごく惹かれたッス!
他のどの船でもない、このダカート号に乗りたい! そして、立派な船乗りに
なるッスよ!」
「……」
エレナは困ったようにモンバの後ろに立っているドノバンとグーリーを見た。
2人はニッと笑って、親指と人差し指でマルを作った。
「ボス、乗船許可を」
そうドノバンに言われ、エレナはモンバの前にしゃがみこんだ。モンバが身構える。
「あなたも私と同じなのね。きっとこのダカート号に導かれたのよ」
そして、笑った。
「それじゃあ、モンバ。私たちと一緒に伝説の剣を探す航海に出ましょうか。手伝って
くれるかしら?」
ぱぁっとモンバの顔に笑顔が浮かんだ。
「アイアイサーーー!!」
モンバが甲板を飛び、ガッツポーズを決める。
新しい仲間に、ワッと全員から歓声があがった。
──そして、次の日、たどりついた港にて。
クロコネシアへ出航する直前の船の前にモンバは立っていた。
もしかしたら、自分が乗り込むことになっていたかもしれない船だ。
「この手紙をクロコネシアに届けて欲しいッス」
1通の手紙とお金をを乗組員に差し出す。乗組員は、気前よくうなづくと、船に乗り込んで
いった。
──デルボイ様、村長、元気ッスか?
オイラ、「ダカート号」って船に乗せてもらえることになったッス。
最初は殺されると思ったッスが、いい人たちばかりッスよ。
たぶんデルボイ様が言ってた「勇者様」とは程遠い船ッスけど、
でも、オイラどうしてもこの船に乗りたいと思ったッス。ごめんなさい。
きっと立派な船乗りになって次に帰ってきたときはレムナスも
操れるくらいになりたいッス。 また手紙書くッス。それじゃ。
─ モンバ
モンバは、クロコネシアへの定期便が出航するのを見届けると、みんなが待つ
ダカート号へと駆け出した。
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