第5話7
ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」





「ギャーーー。大ウミヘビだー。

  沈没だーーーーーーッ!!」


 ここ一番でしっかりしないといけないはずの船長ドノバンの大絶叫が響きわたる。
 物見台は危険だと察し、カーティスはモンバにビリーのところに行くように命じた。
モンバはマストからするすると甲板に降りていく。

「みんな、下がってて!」
 エレナは後部デッキから階段を何段も飛ばして一気に駆けおりメインデッキに降り立つと、
剣を引き抜いた。
 大ウミヘビに剣先を向ける。
「さすがに無茶です、ボス!」
 弓を手にしたグーリーがエレナの背中に怒鳴る。エレナは忠告に構わず、手すりの上に
バランス良く立ち、大ウミヘビと対峙していた。
「この船には指一本触れさせないんだから!」
 エレナが腰を低くし、大ウミヘビめがけてジャンプした。
 頭上に剣を突き立てる。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 大ウミヘビが咆哮し、頭を大きく振り始める。
 そして、

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!」


「ボ、ボスぅーーーーーーーーーーーッ!?」

 大ウミヘビがエレナとともに遠ざかっていく。
 クルーたちは、その光景を呆然と眺めていたが、はっと、ドノバンは我にかえった。
「ヤバいぞ! エドガー、取り舵いっぱい! おやっさん、エンジン全開だ! ボスを
 追うぞ。見失っちまう!!」
 ドノバンが伝声管に叫ぶ。
 大砲回廊から、ダイクとトードが駆け上がってきた。
「船長、大砲の用意が出来たんだナ!」
「待て、打つな! ボスがいるんだぞ! 合図するまで待機だ」
 ダカート号は全速力で大ウミヘビを追いかける。

 甲板から大ウミヘビを窺うランバートは冷静に答えた。
「ふむ。頭を突き刺されて暴れまわっているだけのようですね」
「なんとかボスを救出しなければ」
「オ、オイラが行くッス!」
 そう言ったのは、足をガタガタ震わせたモンバだった。
「泳ぐのなら誰にも負けないッス。オイラが、あの人を連れて帰ってくるッスよ」
「バカ! 何言ってんだ、ガキは船内に引っこんでろ!」
 ドノバンに怒鳴られ、モンバは縮こまったが、そこにグーリーが割って入った。
「お願いします、船長! モンバに行かせてください。責任はオレがとります」
「……」
 沈黙後、ドノバンはうなづいた。
「よし、頼んだぞ。モンバ!」
「アイアイサー!」
 モンバは海に飛び込んだ。




(抜けないッ!)
 エレナは、大ウミヘビの頭上で悪戦苦闘していた。突き刺した剣が抜けないのだ。
 大ウミヘビは、海にもぐったり、上がったりして、暴れまわっていた。エレナは剣から手を
放そうと考えたが、暴れる大ウミヘビに巻き込まれるのが怖くて、大ウミヘビが落ち着くのを
剣にしがみつきながら待っていた。
 そんな時、
「!」
 エレナの手にモンバの手が重なった。
 モンバがエレナにうなづき、2人は力を振り絞って剣を引き抜いた。
 

 

 そして、2人は暴れる大ウミヘビから無事に脱出した。


 
    

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