プロローグ  とある空で




 ここはポポロクロイス王国──────────────のはーるか上空。
 雲の上にそびえ立つのはボリス国王の治める天空の城。

 その城から少し離れた雲の果てに3人の人影があった。
「2人とも、忘れ物はないか?」
 まず、1人はこの天空の城の主、ボリス。
「うん、バッチリ!」
「ピエトロ様へのお土産も持ちました!」
 そして、大きめのカバンを持ち、ボリスに笑顔で手を上げるのは彼の息子と娘の
ラリスとリリス。
 ボリスはうなづくと、2人の頭にポンッと手を置いた。
「ポポロクロイスはとても良い国だ。お前たちもきっと気に入るだろう。
 向こうであまりワガママを言うんじゃないぞ」
「うん、わかってるって」
「はい、わかってます!」
 ラリスとリリスがうなづく。
 ボリスはしゃがみ込むと、2人の体を抱き寄せた。
 ラリスとリリスは父親の抱擁に何も言わなかった。その暖かさを忘れないようにと、目を閉じる。

「ふにゃぁ〜」

 一匹の紫色の猫が、その場の雰囲気をぶち壊すように鳴いた。
 バッと3人が思わず離れる。
「なんだ、スミレか・・・・・・」
 ため息をついて、その猫の名を呼ぶボリス。天空の城で飼っている紫色の猫である。
 ラリスはうれしそうに、スミレを抱き上げた。その顔を覗き込む。
「お前ともお別れだな、スミレ。父さんと仲良くやるんだぞ」
 そう言うと、ラリスはスミレを強引に押し付けた。嫌々ながら猫を受け取るボリス。
「お父様、スミレのことよろしくお願いします。イジメないでくださいね」
「わかった、わかった」
 リリスの言葉にボリスは渋々頷き、叩くように猫の頭を撫でる。
「ピエトロ王によろしくな。それから、あっちの世界で私にお土産の1つでも
 買ってきてくれないか」
「うん、わかった」
「それじゃ、「行ってきまーーーーすッ!!」」
 双子は勢いよく駆け出し、雲から飛び降りた。
 
 地上へとダイビング!!

 2人の姿が見えなくなるまで、ボリス国王は見送った。
 冷たい風が天空の城を吹き抜ける。

「あの子たちがいなくなって、この城も静かになるな」
 ボリスは呟いた。抱きかかえていたスミレがもがく。
「痛ッ」
 ボリスは声を上げた。スミレが彼の腕から逃げ出す。
 手の甲に出来たのは見事な猫の爪のひっかき傷。
 ボリスはスミレを睨んだ。
 スミレはボリスをしばらく見つめ、やがて踵を返すと雲の中に走り去った。

「・・・・・・猫なんか大ッ嫌いだ」

 ボリスは1人、しばらくその場に佇んでいた。



  

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