「まさか! 伝説の仙人様を物で釣るようなことは致しません。ラダック様に
闇の世界へ連れて行ってもらうのは諦めましたから」
すかさずラダック仙人の隣にぴったりと座る。
「ささ、一杯どーぞ。それとも私のすすめるお酒は飲めませんか? 毒なんて
入っていませんよ」
「・・・・・・」
最初は疑いの目で、目の前の透明の液体を見ていたラダック仙人だったが、
やがて注がれるお酒をゴクリと飲んだ。一口、また一口と。
そして、ジャンボが酒の肴を持ってきた頃には、ラダック仙人は頬を赤く染め
上機嫌になってきていた。全く作戦通りである。
「うまいのー、この酒は」
「喜んでもらえて光栄です」
「これ、ジャンボ。お前も飲め」
「へ? あ、いえ、私は結構です」
謙虚に断るジャンボ。ここで彼にお酒を飲まれて酔われでもしたら大変だが、
彼は全くお酒には興味はないらしく、エレナはほっと胸をなでおろす。
「相変わらずつまらん男じゃの、お前は」
エレナはラダック仙人のコップに容赦なくお酒を注いでいく。ピエトロなら
一口で倒せるだろう、アルコール度50を越えるお酒を迷うことなくコップに
ついだ。
ラダック仙人はしゃっくりをし、それからため息をついた。
「はぁ・・・・・・。これでピチピチギャルでもいてくれたらウハウハ
なのにのぉ」
「あら、私がいるじゃないですか
」
ウフッと、普段は絶対にしない動作をするエレナだが、ラダック仙人は
それを認めていないらしい。
「うーん、エレナ姫は雰囲気が違うんじゃよ。こう姫という身分に固められ、
堅苦しいと思える時がある。お前さん、器用に生きられんタイプじゃろ」
「う・・・・・・気にしていることをズバリと」
なんだか説教され始めていないか? エレナはラダック仙人がどれ位、
酔っているのか心配になってきた。もう何本も酒瓶は空になっている。
「そうじゃな、もっとハジけてはどうじゃ?」
「はじける??????」
実のところラダック仙人の言葉をよく聞いていなかったエレナは思わず
聞き返した。
ラダック仙人はエレナに杖の先端を向けた。とっさに脇に置いていた剣を
掴もうとするエレナだったが、ラダック仙人の術のほうが早かった。