第12話  ダーナ神殿、再会、今の私に出来ること
─ そ の 3 ─




 いつも通り、玉座に鎮座するダーナ。
 兵士たちに囲まれているエレナたち。
 エレナの目の前には、服は焼け焦げ、ピクリとも動かないバファン。

「なんで……どうして……」

 エレナの声は震えていた。ダーナを見上げる。
「なんでバファンがこんな目に合わなくちゃならないんですか!? 
 バファンはあなたの心から生まれた、あなたの分身のような
 存在なんでしょう!」

「罰だ」

 ダーナは言った。
「私の命令に背き、闇の世界を危険にさらした。……これは、お前には関係
 ない。こちらの問題だ」
 たしかに、バファンはラリスとリリスを闇の世界へ連れて行くという任務を
背負っていたが、なかなか連れて行こうとしなかった。エレナに妨害されて
いたのも理由になるが、それでも、こんな仕打ちを受けることになるなんて。
「ひどい……」
 エレナは、震えるリリスを自分から放すとバファンに駆け寄り、彼の前に膝を
ついた。
「大丈夫、バファン?」
 焼け焦げた匂い。ボロボロになった体を抱き起こし、呼びかける。バファンは
そっと目を開けた。
「……──」
 何かを言おうとするが、それをエレナは静止させる。
「待ってて。今、回復の魔法をかけるから。ラリスも手伝って!」
「う、うん!」
「いや、いい……」
 息もたえだえにバファンが呟く。
「オレの体はダーナに作られたんだ。お前らの魔法は効きやしない。ここに
 帰ってきて罰を受ける覚悟は出来ていた。オレは大丈夫だ。これくらいの
 ことで……死にはしない……。約束……したからな」
 視線をさ迷わせたバファンは、ラリスとリリスに目を止め、弱々しく笑った。
「『約束』……?」
 聞き返すエレナの前に1人の兵士が現われた。ラリスとリリスについていた
あの兵士だ。
 バファンはその兵士を見、それからゆっくりと目を閉じた。
 兵士は、冷たい目でバファンを見下ろすと、手に持っていた大鎌を彼に
向け構えた。
「帰って来なければ良かったものを。 フンッ、哀れなものだな」
「おやめなさい!!」
 エレナはスッと立ち上がった。
 彼女の目の奥に光るものを見た兵士は恐怖を覚え、一歩後退る。
 エレナはダーナを見上げた。
「こんなこと……しなくてもよかったじゃないですかッ!」
 静かでいて、力強い声が広間に響く。
 エレナの異様な殺気に、彼女の周りをダーナの兵士たちが武器を手に
取り囲む。
 そんなことはどうでもいいようにエレナは兵士に一瞥もくれずにダーナを
睨んでいた。
「ねーちゃん!」
「エレナ様!」
 駆け寄ろうとしたラリスとリリスの前に兵士たちが立ちふさがる。
「ねーちゃんに何かしたら」
「私たちが許さないッ!」
 2人の言葉に、ようやくダーナが口を開いた。
「ならば双子よ。この娘の命が惜しくば、大切なものを守りたいのなら、今すぐに
 『再生力』を発動させよ。これ以上、私たちは待てないのだ」
 2人に向かって。
 金色のパイプオルガンを仰ぐラリスとリリスの心が揺らぐ。


 その時だ!!




ドカーーーーーン!!




 広間の壁が大爆発と共にくずれ去った。ラリスとリリス、そしてダーナの兵士たちが
その爆発した方を振り返る中、それでもエレナは鎮座するダーナを見上げ続けて
いた。





「がーーーはっはっはっはっ! 
 待ってた諸君も、待っていなかった諸君も、
 全員まとめて
 俺様の登場Web拍手ッ!!!





 なんと壁を突き破ってド派手に現われたのはあの絶対無敵超高速飛空艇・
怒涛空王丸だった! マイクを通して、ガミガミ魔王の声がダーナ神殿に
響き渡る。

 予想外の危険人物にダーナの兵士たちが弓矢を使って一斉に攻撃を始めるが、
空王丸のボディには傷一つつかなかった。
「ふっふっふっ。お前らの攻撃など痛くもかゆくもないわ! ま〜だフンバフンバ村の
 奴らの攻撃のほうが 精 神 的 にもキツイわ!
 おい、そこの悪魔のよーな天使の双子! エレナを連れて空王丸に乗り込め!」
 ガミガミ魔王の大音響と共に空王丸のハッチが開いた。
 ラリスが決意したかのようにエレナに駆け寄り、彼女の腕をつかむ。
「行こう、ねーちゃん!」
 エレナはダーナから視線をバファンに落とした。
「バファンを置いていけないわ!」
 ラリスの手を振り払う。
 気を失っているバファンの首には大鎌がかけられている。例の兵士だ。
「バファンから離れてちょうだい!」
 エレナは剣を引き抜き、兵士を睨んだ。2人が対峙する。

「……」
 声は発しなかったが、その兵士の口がそっと動いた。「行け」と。

「え……?」
 兵士の目にエレナと戦う意思は見られない。兵士はニヤリと笑う。
 その時、エレナの体を背後から何かが掴んだ。
 空王丸から伸びてきた巨大マジックハンドだ。それぞれエレナ、ラリス、リリスを
掴み、空王丸へと引っ張る。
「バファン!」
 エレナは手を伸ばしたが、バファンの姿は遠のいていく。
「何をしている! ここから出すわけにはいかない、捕まえるのだ!」
 ダーナの声が広間に響く。
 兵士たちが空王丸に向けて弓矢を放つが全て鋼鉄のボディに弾かれてしまう。
ラリスとリリスに矢を当てるわけにはいかない。それがダーナの兵士たちの攻撃を
鈍らせてもいた。

「ボクたちは……必ず帰ってきます!」
「使命を忘れたりなんてしませんから!」
 ラリスとリリスがダーナに向かって叫ぶ。

 空王丸はエレナたちを首尾よく回収すると、エンジン全開でダーナ神殿から
颯爽と飛び立った。 





  




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