第13話  闇の世界のとある星、運命の選択
─ そ の 1 ─






愛する人までくっつけちゃう!?
『なんでもくっつく漢の接着剤』 オープン価格
あああああ
!空王丸内売店で発売予定!
あああああ





「ちょっと、どういうことよ!?」

 空王丸内、ガミガミ魔王のいるコントロールルームに入るなり、エレナは怒鳴った。
 落ち込んでいると思いきや、怒っているとは……ガミガミ魔王が面倒くさそ
うに振り返りチラリとエレナを見たが、再びモニターに視線を戻す。
「このCMはだなぁ……」
「CMって、漢の接着剤なんてどーでもいいわよ!!!」
 エレナの後ろをついてコントロールルームに入ってきたラリスとリリスがうれしそうに
目を輝かせた。
「うわー、すごいすごい。機械ばっかし!!」
「ガミガミ魔王様、お久しブリですッ!」
 ラリスとリリスの甲高い元気な声ににガミガミ魔王はため息をつく。
 確かに、彼とはハタハタ村で別れたはずだ。「闇の世界なんか行かん」と
あれだけ言っていたのに、何故ここへ?
「あぁ、俺様ってばこんなところで何やってんだか。はぁぁ、ナルシアちゃんに
 会いてーなぁ。癒されたい」
「今すぐダーナ神殿に戻ってちょうだい! あなた、バファンを見殺しに
 するつもり!?」
「ざけんな、今更戻れるかッ!」
 前方のモニターに映し出されたのは、空王丸の後方、ダーナ神殿はすでに
豆粒ほどの大きさに遠ざかっていた。そこからたくさんのダーナの兵士たちが
こちらに向かって飛んでくるのが見えた。
 しかし、エレナにはそんなことは関係ないらしい。
「ひどいわ、バファンは重傷を負っていたのよ。早く治療してあげないと!」
「だー−−ッ! その話は後だ後! あの後方の邪魔な奴らを振り払うから
 ガキどもを押さえつけとけ!」
 ガミガミ魔王の声と同時に空王丸は速度を速めた。
 船体がグラリと揺れ、エレナは足元をふらつかせる。辺りを見渡し、ラリス
とリリスの姿を探す。2人は小さな丸い窓からのん気に外を眺めていた。
「ちょっと、2人共!」
 エレナは歩み寄った。
「大丈夫だって、ねーちゃん」
「あのダーナの兵士さんたちの狙いは私たち。この船を攻撃するようなことは
 絶対にしませんわ」
「ボクたちにケガされて困るのは、あの人たちなんだから」
「まぁ、確かにそうだけど……」
 エレナは、操縦桿を握るデフロボや、レーダーで兵士たちとの距離を測っている
デフロボに指示を送り続けているガミガミ魔王を振り返る。
 ダーナは言っていた。『永遠の番人により闇の世界への扉は閉じられた』と。それ
をガミガミ魔王が開けることは、彼の実力がいかほどか定かではないが、無理だろう。
 ガミガミ魔王が、エレナたちをダーナ神殿から連れ出した理由とは……。空王丸の
向かう先に何があるというのか。
「ねぇ、私たちはどこへ行こうとしているの?」
「俺様を行きたくもないこの闇の世界に引きずり込んだ
 最っっ低なヤツのところだ」
「誰なの?」
「行きゃわかるッ!」
「……そう」
 エレナは考えるのをやめ、双子と一緒に丸窓から外を眺めた。その目が点に
なる。ダーナの兵士たちが弓をこちらへ構えているのだ。今にも攻撃してくる
勢いだ。
「ちょっと、まずいんじゃない?」
 そう言った途端、ダーナの兵士たちの空王丸への攻撃が始まった。
 ダーナの兵士たちが一斉に矢を放つ。
 船体が傾き、エレナたちは側にある装置に手をついた。室内の明かりが
点いたり消えたりし、ブザーが鳴り響く。
「魔王サマ! 後部の燃料タンクがやられたデフ! 減速するデフ!」
「ちっ。一点集中型で狙いやがったな、あいつら〜!」
 ガミガミ魔王は操縦デフロボを押しのけると、自らコントロールパネルに
触り始めた。
 嫌な予感を覚えたエレナがガミガミ魔王に駆け寄る。ガミガミ魔王のすぐ
目の前にある黄と黒の縞模様のパネルの上の赤いボタン
見て一歩後退った。

 このボタンは……みなさんご存知のあのボタンである。

「ま、まさか自爆するんじゃないでしょーね!?」
「ふっふっふっ、あいつらに目にもの見せてやる!」
「ちょっと、やめなさい!」


「くらえ、必殺───プ〜ミサイル! 発射ッ!!」


「だから男のロマンはやめ……え(ーー;)」
 ガミガミ魔王は自爆ボタンではなく、別のボタンを片っ端から叩くように
押していった。ミサイルが発射される。
 ミサイルはダーナの兵士たちのいる付近で爆発し、辺りに怪しげな黄色い
煙が立ち込める。
「がーーーーはっはっはっ、恐れ入ったか!」
 ふんぞり返って笑うガミガミ魔王。
「おじさん、すっげーーー!」
 感心したようにラリスが声を上げた。
「なんてセンスのない攻撃……」
 リリスが呟く。
 薄れ始めた煙の中から、咳き込み苦しみもがくダーナの兵士たちの姿が
モニターを通してエレナたちにも確認出来た。……お気の毒に。



 その時、空王丸が揺れた。空気が変わり、圧力をかけられたように体が
重くなる。
「な、なに!?」
「ワープするデフ」
 辺りが光に包まれ始める。
 その眩しさにエレナは目を閉じた。






  




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