第1話 ウッキィ帝国、舞い降りた天使たち
─ その 3 ─
現われた2人の子供に、ドンとゴン、サルたちがワーワーとわめき出す。
羽を生やした天使な二人が「お迎え」にいらっしゃったのだと思ったのだろう。
現に、先ほど岩の下敷きに・・・・・・。いや、下敷きにはならずにすんだのだが。
「本当にあなたたちは天使なの?」
エレナはドンとゴンたちを横目に2人に近づいた。
「んなわけないじゃん (ーー;)」
「フフ、面白い人たち。この背中の羽はニセモノ、ただ服についてるだけです。
私たちはちゃーんとした人間ですよ」
「まったく父さんの『かわいいもの好き』の趣味には勘弁してもらいたいよ」
「あら、私は好きだけど?」
・・・・・・どうやら2人の服は、2人の父親の趣味ということらしい。
ドンとゴン、サルたちは生きていることに抱き合って喜んだ。
中断してしまったエレナたちとサルたちの戦闘。それぞれお互い、一通り暴れたので、
もう1ラウンド戦う気は両者には湧いてこなかった。サルたちは洞穴にたまった岩を流れ
作業で外へと運び出している。
「うーん、ひとまず城へ帰りましょうか」
エレナがドンとゴンに合図を送る。エレナはボスザルを振り返った。
「もう二度と列車に悪さをしないでちょうだいね」
「ウキャ」
エレナはため息をつく。たぶん、これからもずっと平行線のまま人間とサルとの戦いは
続くのだろう、そう思う。
「こんな終わり方はダメです!」
突然、女の子のほうがキッパリと言った。男の子も状況を見定めたようで、腕を組み
うなづく。
「ん。和解するべきだ」
エレナとボスザルは目をパチクリさせて2人を見た。
そもそも、この子供たちは一体何者なんだ・・・・・・?
遠くで汽笛が聞こえてきた。線路の岩を除去した列車が動き出したのだろう。
サルたちがざわめく。その様子にエレナはポンと手を叩いた。
「なるほど、ここはサルたちの国なんだわ」
「ウキャ!」
その通り!と言わんばかりにサルたちがうなづく。
「サルたちの国の敷地に私たちは線路をひき、列車を走らせている」
「ウキャ−!」
どうやらビンゴらしい。ドン将軍があごに手を当て話し始める。
「そう言えば、またサルたちが暴れだしたのは、ちょうど列車の本数を増やし始めたころと
重なります」
「ウッキャーーーーーーーーー!!」
ボスザルが泣きつくようにエレナにしがみついた。勝手に自分たちの土地に線路をひき、
我が物顔で列車を走らせている人間にサルたちは困っていたのだ。ただ好きで悪さをして
いたわけではない。
理由、ちゃんとあるのだ。
エレナはボスザルに手を差し出した。ボスザルがその手を見つめる。
「和解」
エレナは微笑んだ。
「状況は理解できたわ。にいさまに何とかするように頼んでみるわ。でも、私たちとしても、
どうしても列車を通して欲しいの。あなたたちに通行料を払うとか、列車が通る時間帯を
決めるとか、何とか対処するようにするから、勘弁してくれるかしら?」
サルはエレナの言葉を理解したのだろうか? ボスザルはずっと見つめていたエレナの
手を握った。
ひとまずは一件落着。
「ありがとう、あなたたちのおかげよ・・・・・・って、あら?」
突然現われた2人の子供に礼を言おうと思ったが、一足先にウッキィ帝国を出て行って
しまったらしい。モンスターも多い危険な場所で大丈夫か心配し、大声で呼んだりして探したが、
2人の姿はすでに見当たらなかった。
エレナとドン将軍、ゴン将軍は馬を走らせ、ポポロクロイス城へと向かった。