第2話 王家の洞窟、にいさまとラブラブデート
─ そ の 3 ─


 風車小屋から地下へ降り、王家の洞窟へとやって来たピエトロとエレナ。
 薄暗い洞窟の中、ピエトロがたいまつを持ち、洞窟内を照らす。洞窟内の
かび臭い匂いを吸い込み、エレナは辺りを伺った。
「ねぇ、にいさま。なんだかものすんごくモンスターの気配がするんだけど・・・・・・」
「気のせいだ。さ、行くぞ」
 ピエトロが奥へと歩き出す。エレナは周りを気にしながらピエトロの背中を追う。

 王家の洞窟──以前エレナもこの場所を訪れたことがあった。ピノンたちと
月の雫を取りに来たのだ。その時と比べてもモンスターの気配は今のほうがもっと
強く感じる。今、世界中のモンスターが凶暴になってきているのは確かだ。この
王家の洞窟もその影響を受けているということか・・・・・・。
「エレナ、お前はまたダイエットでもしているのか?」
「へ?」
 エレナの思考はそこで途切れた。兄の質問に頓狂な声を上げる。
「な、なんでまた(^_^;)?」
「いや、今朝、朝食を食べてないだろう? だから・・・・・・」
 ピエトロはエレナが朝食に現われなかったのを心配しているようだ。
「ふふッ」
 エレナは笑った。
「心配してくれてありがとう。にーさま、大好き
 エレナはピエトロの腕に抱きついた。顔を赤くし、照れるピエトロ。
「こ、こらエレナ!」
 と、叱るピエトロだが、まんざらでもなさそうだ(笑)。
 本当に久しブリ、と、エレナはピエトロにくっついて歩きながらそう思った。
小さい頃は兄の側をしょっちゅうカルガモの親子のようにくっついていたが、
ピエトロが王位を継承したり、ナルシアと結婚したりするにつれ、ピエトロと
一緒にいる時間がなくなってきていた。
 2人きりなんて、いつ以来だろう・・・・・・。
「船の人たちとは仲良くやっているのか?」
 ピエトロに聞かれ、エレナはうなづいた。
「えぇ。いい人たちばかりよ。家族みたいに、毎日楽しくやってるわ」
「そうか・・・・・・。旅の途中に呼び戻してすまなかったな」
「その話はもういいわよ」
「航海は楽しいか?」
「えぇ、とっても! いろんなことが起きるの。毎日新しいことばかり!
 世界って広いのね。海へ出て良かったって本当に思ってる」
 そう言いながらエレナはピエトロの顔を見た。言っちゃいけなかったかなと
後悔する。ピエトロだって一国の王の座よりも自由を求めたかったのではない
かと、そう思う。
「ん? なんだ、私の顔に何かついてるのか?」
 エレナの視線に気付き、ピエトロは眉をひそめた。
「ううん、なんでもない。そのヒゲ、似合ってきたなーーって思ってたの」
「そ、そうか? 最初はウケが悪かったが、みんな慣れてきてくれたようだ」
 照れたように笑うピエトロ。
「そう言えば、エレナ。ピノンから聞いたが私が昔使っていたオカリナを今は
 お前が持っているそうだな」
「え? えぇ。上手く吹けるようになったわよ」
「そうか。今度聞かせて欲しいものだな」
「うん」
 くだらない会話がエレナの心を幸せで満たしていく。


「あなたはピエトロを裏切り、ポポロクロイスを滅ぼすわ」


 突然、エレナの頭の中に昨夜の夢がよみがえった。アリスがエレナに向けて
発した言葉。
 さっとピエトロの手を離し、立ち止まる。
 それに気付いたピエトロも立ち止まり、エレナを振り返った。
「どうした?」
 エレナの血の気の無い顔に不安になるピエトロ。
ねぇ・・・・・・にいさま
「なんだ?」
「もしも、もしもよ、もしも私が・・・・・・にいさまを裏切るようなことをしたらどうする?」
「例えば?」
 ピエトロに聞き返され、エレナは考えた。
「そうね・・・・・・もしも私が美の女神マイラのように闇の力を手にしてしまったら
 どうする?」
 我ながら突拍子も無い質問だなとエレナは思った。笑ってはぐらかされても
仕方ない。
 ピエトロはエレナの真剣な目を見つめ、それから目を閉じ、あごひげを触った。
「そうだな・・・・・・まぁ、その時になってみないとわからないな」
 それがピエトロの答えだった。
 エレナは納得してうなづいた。
「そうよね。変なことを聞いちゃってごめんなさい。先を急ぎましょう」
 エレナとピエトロは並んで王家の洞窟を先へと進んだ。



  


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