第2話 王家の洞窟、にいさまとラブラブデート
─ そ の 4 ─


 じめじめとした洞窟を歩き、エレナとピエトロは宝物庫に辿り着いた。
 石の扉を開け中に入ると、そこにはポポロクロイスに代々伝わる代物が置かれて
いた。魔力のこもったアイテムや、語り継がなくてはならない貴重な書籍、
それに山積みにされたお土産の数々が・・・・・・。

 ん・・・・・・お土産? (ーー;)

 エレナはジト目でピエトロを睨んだ。その視線に気付いたピエトロが苦笑する。
「いやな、城のほうにある宝物庫にお土産が入りきらなくなって・・・・・・」
「月の雫を取りに来た時にも思ったんだけど、趣味で宝物庫にお土産置いて
 いいワケ?」
 エレナはため息をついた。さすがにここまでお土産に執着心があると呆れる
しかない。
 エレナが宝物庫を見渡している中、ピエトロは持っていた鍵で宝箱を開けた。
薄暗い宝物庫の中で光り輝く知恵の王冠を手に取る。知恵の王冠は神々が人間族
の王に与えたものでとても貴重な代物だった。大事な式典の時にかぶる物で、
エレナもなかなかお目にかかれない。
「さて、戻るか」
 知恵の王冠を小脇にかかえ、ピエトロが立ち上がる。エレナもうなづいた。
「えぇ、お腹がすいたわ。早く戻って朝食変わりの昼食にしましょう」
 ピエトロが石の扉を開ける。


「・・・・・・」


 バタンッ

 ピエトロは外へ出ようとせず、そのまま扉を閉めてしまった。
「どうしたのよ、にいさま? 早く出ましょうよ」
 エレナが扉に手をかけるのをピエトロは止めた。
「なに、なんなの?」
「外でモンスターがウヨウヨと宝物庫を出た私たちを襲おうと待ち伏せしている」
 ピエトロが失笑する。
 確かに、宝物庫に来るまでにモンスターの気配を異様なまでに感じていた。それ
なのにモンスターは襲ってこなかったのをエレナは不思議に思っていた。ただ単に
天下の勇者ピエトロが怖くて襲ってこないのだろうとも考えた・・・・・・が。
 モンスターたちはこの時を狙って待ち伏せをしていたのだ。
「何匹ぐらいいるの?」
「うーん、50は軽く越えてると思う」
 2人は宝物庫の中に閉じ込められたということになる。王家の者しか入ることが
許されないこの場所で、救助を待っていたら餓死してしまうだろう。
「ねぇ、にいさま。前に王家の洞窟を訪れたのはいつ?」
 エレナの質問にピエトロは腕を組んだ。
「そうだな。・・・・・・3ヶ月前にお土産を運びに来た」

「さ、3ヶ月!?」

 エレナの声が宝物庫に響く。
あーのーねー、にいさま。ここは大切なものが山ほどある『王家の洞窟』よ。
 せめて3日に一度は見回りに来るのが当然でしょう! 3ヶ月もほったらかしに
 していれば、宝物庫にホコリはたまるし、モンスターだって大きな顔して住み
 着くわよ!」
「すまん、エレナ・・・・・・。気をつける」
 妹に注意され、ピエトロは手をあわせて謝る。エレナはうなづいた。
「ん。それじゃあ帰りましょうか」
 エレナが再び石の扉に手をかける。慌ててピエトロが止める。
「待てエレナ、扉の向こうには山のようにモンスターがいるんだぞ」
「にいさまと一緒なら全然平気よ!」
 サラリとエレナの口から漏れた言葉と、嘘偽りのないその瞳にピエトロは面食
らった。口を開けている。
「じゃ、強行突破決定ね。開けるわよ」
 エレナが石の扉を力強く開ける。
 薄暗い通路に足の踏み場もないくらいのモンスターたちが2人の首を取ろうと
待ち構えていた。モンスターの瞳がギラギラと不気味に光る。
 エレナとピエトロは反射的に剣を抜いていた。次々と襲い掛かるモンスターを
左右になぎ倒していく。
 しかし、モンスターは次から次へと現われてくる。2人の力が尽きるのを待つ
ように襲い掛かるモンスターの群れ。
「大丈夫か?」
 ピエトロとエレナが背を合わせ、剣を構え直す。
「えぇ、平気・・・・・・とは言えないかも」
 エレナのちょっと弱気な発言。ピエトロが剣を持つ手に力を入れた。
「私はお前を信じているぞ、エレナ。どんな闇にも決して負けたりしない。
 お前は私のたった一人の妹だからな」
 その言葉にエレナの胸は軽くなった。笑みがこぼれる。

 ──自分の立っているこの場所、大切にしないと。

 エレナとピエトロはモンスターに向き直るとそれぞれ同じように腰を低くし
剣を構えた。

「「かーぜーのー・・・・・・刃ッ!!」」

 2人の起こした風がモンスターに襲い掛かる。たくさんのモンスターが吹き飛び、
綺麗に通路が開いた。その威力に驚いたのか後方にいたモンスターたちが慌てて
逃げ出す。
 その一撃が効いたのか、モンスターは数を減らしていき、通路はエレナとピエ
トロのみになった。あたりに邪悪な気配を感じなくなる。
 2人は深く息を吐くと剣をしまった。
「にいさまのおかげね。さすがポポロクロイスの勇者ッ!」
 笑うエレナにピエトロはうれしそうにうなづいた。
「エレナ、お前もだいぶ強くなったな」
「そうでしょ? 海でたくさん修羅場をくぐってきたもの」
 2人は笑った。久しブリに、心の底から。
「さぁ、行くか」
「私、お腹すいたわ。そう言えば、チンさんJrの料理の腕はどうなった?」
「ははっ、それは食べてからのお・た・の・し・み
 2人の明るい声が王家の洞窟に響く。



 ──にいさまを裏切ることなんて、私は絶対にしない。するわけないじゃない。
 エレナは自分に言い聞かせた。



  


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