第3話 ポポロクロイス城1、狙われた知恵の王冠
─ そ の 2 ─



 魔法の塔、最上階にある展望台。

「あ、いたーーーーーッ!」

 先に階段を登ったピノンが声を上げた。エレナも安堵の胸をなでおろす。
 ラリスとリリスが天体望遠鏡の側にいたのだ。一緒にサボーの姿もある。
「あれ、ねーちゃん。それにピノン王子」
「エレナ様にピノン様、そんなに血相変えてどうされたのですか?」
「『どうされたのですか?』じゃないわよ。んもう、探したんだから・・・・・・」
「あ、すみません。私が2人を誘ったんですよ。叱らないでください」
 サボーが弁解をした。
 天空の地ブリオニアに何千年と住んでいたサボー。2人の住む天空の城の
ことを詳しく聞きたかったそうなのだ。広間で散々質問攻めにされて話すのも
面倒だったラリスとリリスだったが、サボーのその犬の姿と、そして魔法の塔
にある天体望遠鏡に惹かれてサボーについてパーティーを抜け出してきたらし
い。
「でもさー、今日は曇ってて星が見えないんだって」
 ラリスが頬をふくらませる。
 エレナは空を見上げた。昼間は晴れていたが、今は曇っていて夜空は闇の
カーテンがしかれたように暗かった。
「まあ、一ヶ月も城にいることですし、明日以降に星は見れますよ。その時、
 天体望遠鏡で星を見ましょう」
 サボーが双子をなだめる。
「天空のお城だったら、毎日星が見れるのに・・・・・・」
「え、君たちのお城はいつも晴れてるの?」
 ピノンの問いにラリスはうなづいた。
「そうそう。雲の上にあるからね」
「へぇ〜、行ってみたいッ!」
 目を輝かせるピノン。
「「・・・・・・」」
 ふと2人の顔が曇ったようにエレナは感じたが、それはほんの一瞬の
ことで2人は笑顔でうなづいた。
「うん、すごくいい所だからピノン王子も来てよ」
「エレナ様も来てくださいね」
「え? ・・・・・・えぇ」
 エレナは2人に少し不安を覚えながらうなづいた。
「パプーも一緒に2人のお城に行こうね」
「パープー」
 ピノンが頭上のパプーに話し掛ける。
 パプーの存在に目をキラキラと輝かせるラリスとリリス。
きゃー、かわいい☆ ピノン様、抱かせてください!」
 パプーがリリスの腕の中に飛び込む。リリスに抱かれ、パプーはまんざら
でもなさそうで、しっぽを左右に揺らしている。
「ふわふわ〜、気持ちい〜〜」
「おい、リリス。ボクにも抱かせろよ」
 ラリスがリリスからパプーを受け取った。
「パプーはね、月の精霊さんなんだよ」
 ピノンの言葉にリリスは首をかしげる。
「月・・・・・・って、あの空にある月のことですか?」
「うん! パプーは僕の友達なんだッ!」
 ピノンは初めて出来た友達のことを自慢げに笑ってみせた。
 ラリスがパプーをなでる。パプーは気持ちよさそうに目を細めた。
「ボクたちも猫を飼ってるんだ。名前はスミレ。案外、賢くって肉球が
 プニプニしてて色もパプーみたいに紫色をしてて・・・・・・」
「うーん・・・・・・パプーは猫じゃないんだけど^_^;」
 ピノンが苦笑する。
 ラリスがふとパプーの顔を覗き込む。パプーの目を覗き込んだ途端、彼の顔から
さっと笑顔が消え、パプーを手から離した。
 ストンッ 地面に着地するパプー。不思議そうに首をかしげラリスを見上
げている。
 ラリスは何事もなかったように再び笑顔に戻った。
「リリス、お腹すいたよな。広間に戻って何か食べてこよう」
「う、うん」
 ラリスはリリスの手を半ば強引に引き、魔法の塔を降りていった。
 それを見つめるエレナとピノンとサボーと、パプー。
「今、パプーを避けたわよね?」
「うん、僕にもそう見えた」
「・・・・・・私にもそう見えましたが」
「どうしてかしら?」
「わからない。・・・・・・でも、もしかしたら」
「もしかしたら?」
「月の光が眩しかったんじゃない?」
「は? (・_・)」
 ピノンの言葉にエレナは眉をひそめた。
 今度はエレナがパプーを抱き上げた。オレンジ色のその瞳を覗き込むが
何も感じない。
「ねぇ、パプー。あなたが月の精霊なら1つ聞きたいことがあるんだけど・・・・・・」
「パプ」
「どうして私は毎度夢の中でウサギなの? 月にはウサギが住んでるって
 いうから、パプーなら私の夢の謎がとけるかしら?」
「パプ?」
 パプーは首をかしげた。エレナの質問の答えを教えてくれそうにはない。
「エレナ姫、夢の謎とは何ですかな?」
 興味を持ったらしいサボーが身を乗り出してきた。毎夜見る夢について話
してもいいものかエレナは迷った。
「サボー先生、実は・・・・・・」
 サボーと向かい合った、その時。


ドカーーーンッ


「な、なにッ!?」
 爆発音と地響きに3人は身を強張らせた。窓から外を覗く。
 パーティーの開かれている広間のほうから煙があがっている。天空の城も
モンスターに襲われたという。ポポロクロイス城もモンスターに狙われたのか?

 エレナは剣を手に取り広間へと駆け出した。



  




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