第3話 ポポロクロイス城1、狙われた知恵の王冠
─ そ の 3 ─



 人々の叫び声が聞こえる。ドン将軍、ゴン将軍を筆頭にたくさんの兵士たち
が重い鎧を身に付け広間へと向かって廊下を走っていく。
 ラリスとリリスは大丈夫だろうか、エレナは逃げようとするパーティーの
参加者たちの波にもまれながら広間に辿り着いた。
 天井には敵の攻撃で大きな大きな穴が開き、素敵に空が眺めるようになって
いた。テーブルの上の食事や、天井のガレキなどが広間に散乱している。

「あーーーーっ!」

 モンスターかと思いきや、エレナはその襲撃者に声を上げた。
「ガ・・・・・・ガミガミ魔王・・・・・・さん? (-_-;)」
 そう。
 前回の月の掟の冒険での協力者、ガミガミ魔王がポポロクロイスに攻めて
きたのである。
 力が抜け、剣が手から滑り落ちそうになったエレナ。すんでのところで
我に返ると彼女はガミガミ魔王の乗る巨大ロボットを見上げた。自分の容姿
に似せた相変わらずド派手なの装甲のロボットはピエトロ王を襲う寸前で
止まっていた。
 そのてっぺんがパカッと開き、中からガミガミ魔王が姿を現した。



「がーーーはっはっはっはっ! 
 いや、この展開、久しブリ。
 待ってた諸君も、待っていなかった諸君も、
 全員まとめて
 俺様の登場にWeb拍手ッ!!!




















 かなりやばい空気が広間に流れる。
「うっ・・・・・・」
 しかし、ガミガミ魔王はすぐにピエトロの隣にいるナルシアを発見し
テンションを高めた。

「おーーーっ。ナルシアちゃーん。お久しブリ

 ナルシアはガミガミ魔王に複雑な笑みを向ける。
「ガミガミ魔王さん、今日のところはとりあえず帰って(^_^)」
「まったまた〜。ナルシアちゃん照れちゃって」

 照れてねぇよッ! と広間にいた全員が心の中でガミガミ魔王に
ツッコミを入れる。
 そこへエレナの元へ魔法の塔から走ってきたピノンが追いついた。
「「ピノンッ!!」」
 広間にいたルナとマルコがピノンに駆け寄り合流する。
「あれって、ガミガミ魔王さんだよね?」
 ピノンは不思議そうに首をかしげ、ロボットを見つめる。

「何しにきたんだろう?」
 するとピノンは驚くことにガミガミ魔王に手を振り大声で叫んだのだ。

「ガミガミ魔王さぁぁぁぁぁん! 
     こーんばーんわーーーーー!!」

「ピ、ピノン、あのロボットに狙われたらどうするのよ?!」
 慌ててエレナがピノンの口をふさぐ。
 しかし、それに気付いたガミガミ魔王はこちらを振り返り、ピノンたちを
見つけた。
「おぉ、これはピノン坊ちゃん・・・・・・・・・・・・と、その他一同」

「今日は
  どーしたんですかーーーーーー?」

 広間を半分以上ガミガミ魔王のロボットに壊されているこの状況の中で
平然と話し掛けているピノンは将来大物になること間違いなしである。
 ガミガミ魔王は思い出したように体勢を整えた。
「そうそう、坊ちゃん。よーく聞いてくれました」
 次にガミガミ魔王はエレナを睨んだ。
「なに、私?」
「おうよ、元はと言えばお前だ、エレナ。宝探しの最中になんで船を降りた
 んだ。せっかくバファンの剣を俺様のものにしようとお前らの船の跡を
 つけてたのに!」
「知らないわよ、そんな事! それにしてもやっぱりあなたバファンの剣を
 狙ってたのね、卑怯よ!」
「お宝争奪戦に卑怯もへったくれもなーーーーいッ! 
 なんでポポロクロイスに戻ってきたんだ?」
 エレナはすっと指を差した。ガミガミ魔王のロボットの先にいる人物を。
「にいさまが1ヶ月だけ帰ってこいって言ったからよ」
「にーさまの命令にいちいち従っているとは、まだまだ青いなブラコン娘」
「ロリコン親父に言われたくないわよ! 頭にくるわねぇ」
 エレナは剣を構えた。ドレスを着ているので動きづらいが周りには援護を
してくれる兵士たちもたくさんいる。勝ち目は十分こちらにある。
「まぁ、待てエレナよ」
 しかし、ガミガミ魔王はエレナを静止させる仕草をするとピエトロを睨み降ろした。
「俺様はお前に貸しがある。なぁ〜、ピエトロ?」
「・・・・・・」
 黙って身構えるピエトロ。
「PS2『ポポロクロイス月の掟の冒険』で、お前らが石化して大ピンチ
 だったのをピノン坊ちゃんと一緒に救ったのはどこの誰だ?」
「お・・・・・・お礼を言ってなかったですね。その節はありがとうございました」
「そう、俺様がポポロクロイスのピンチを救ってやったのだ。褒美の1つ
 くらい出してくれてもいいだろう、んー?」
 ガミガミ魔王はロボットから身を乗り出してピエトロを見下ろした。ピエトロは
相手にわからないように服の下で竜の剣に手をかけ、ガミガミ魔王が攻撃しよう
とすればすぐに反撃できる体勢を取っていた。被害を最小限に抑えられるように
頭をめぐらせているのだろう。さすがにここでこれ以上暴れられたら・・・・・・
考えたくもない。
「んまあ、初心に返ってだなぁ」
 ガミガミ魔王はピエトロの頭上を指差した。

「知恵の王冠、くれ!」
「ダメです」
 即答、ピエトロ王。


「んじゃあ、ナルシアちゃんと離婚してくれ」
「ダメですッ!!!」 


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ふっ、お前と話し合いをしようとした俺様がバカだった。こうなったら
 力づくで知恵の王冠強奪してやるわッ!
 ガミガミ魔王がロボットの中に消え、ロボットが動き出す。
 兵士たちがロボットを取り囲み武器を構える。エレナが剣を構える隣では
ルナとマルコがそれぞれバトンと斧を手にしていた。
 ピノンはオロオロと両陣営を交互に見ている。

 と、その時。



 じゃっじゃっじゃっ 
    じゃーーーーーーーーーんッ!!



 そのピアノの音に全員の動きが止まった。
 広間の隅、先ほどまでパーティーでオーケストラが素敵な演奏を奏でていた
場所。奏者たちは既に避難し、そこにポツリと残されたグランドピアノから
その音は聞こえた。
 そこに座っている人物。

「運命がこのよーに戸を叩く、ってね」
「せっかく素敵な演奏を聞きながらお食事してたのに、残念ですわ」

 ピアノの前に腰掛けていた2人がガタッと立ち上がった。
「ラリス、リリス!?」
 エレナが叫ぶ。エレナは2人が部屋に帰ったものだと思い込んでいた。
双子とガミガミ魔王の間に流れるのは険悪な空気。
「誰だぁ、お前ら?」
 ラリスとリリスにつっかかろうとしたガミガミ魔王。
 エレナがロボットと2人の間に割って入った。
「この子たちは1ヶ月城で預かっているの。関係ないでしょ。手を出さないで」
 エレナの横をさっと誰かが通り過ぎた。振り返るとリリスの姿がない。
ラリスは後腰の杖を取り出していた。

「でやぁっ!」


ガンッ


 ガミガミ魔王のロボットに必殺の蹴りをくらわすリリス。華麗に着地するが・・・・・・。
「いったぁーーーいっ!」
 足を抑えてうずくまるリリス。普段の彼女の靴は可愛らしい見た目とは
裏腹の細い金属を編み込んだ特製の膝まであるブーツなのだが、今日は
ナルシアの用意してくれたドレスに靴はとくに何も攻守など考えていない
パンプス。
 それでロボットに蹴りを入れたのだから、そりゃ痛い。
「うわーーーははははは! 俺様のロボットの装甲が蹴りで破られる
 はずが・・・・・って、あ゛ーーーーーーーーッ!?」
 ロボットの左腕が妙な方向に曲がり、凹んでいるのだ。

「アイシングブルー!」
 
 そこへ間髪入れずに飛んできたのはラリスの魔法。ラリスの持つ杖の赤い
水晶が青く輝き、凍てつく氷がロボットを襲う。
 一瞬で凍りつく左腕。
「さて、ここで問題。凍らせたコップに熱湯を注ぐとどーなるでしょう?」
「な、バカ、やめろーーーッ!」

「フレイムフィールド!」

 ガミガミ魔王の声とラリスの杖から放出された炎は同時だった。
 ロボットが炎に包まれ、凍り付いていた左腕は見事に砕け散ったのである。
 広間にいた全員がラリスとリリスの動きに見入っていた。

 双子がロボットに向かって親指を突きつけた。
「天空の城の双子を知らないなんて、覚えとかないと後悔するぜ」
「私はリリスで、こっちはラリス。・・・・・・それで、あなたのお名前は?」
 
 2人の攻撃に、全員がしばらく黙っていた。




  




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