第3話 ポポロクロイス城1、狙われた知恵の王冠
─ そ の 4 ─




 ガミガミ魔王の乗るロボットの左腕のあった場所から煙が上がっている。
ラリスとリリスの強気な笑顔は「まだまだやる気満々です」というオーラを漂わせ、
ロボットに次の攻撃を仕掛けようと構える。
 唖然とする広間にいる兵士たち。
 エレナは、ウッキィ帝国で2人に助けられたことを思い出していた。あの時、
天井の岩が崩れるのを助けてくれたのは、ラリスとリリスだった。


 ──かなり強い!!


「うっ、こんなガキどもにやられるとは・・・・・・。いや、まだまだやられてないぞ。
 俺様にはまだ右腕が残されている!」
 ガミガミ魔王の声がロボットから聞こえる。ロボットが高々と腕を振り上げると
双子から向きを変え、ピエトロに襲い掛かった。
「うっ・・・・・・」
 突然。隙をつかれたピエトロは壁とロボットの腕の間に体をはさまれ、もがき
苦しむ。自力で脱出は不可能だ。
「あ、あなた!?」
「お父さん!!」
 ナルシアとピノンが叫び、2人がホーリーバーストと風の刃をロボットに
向け放つ。兵士たちも武器を構えなおす。エレナも気を緩めずに動向を伺う。
 ナルシアとピノンの技がロボットに命中し爆発が起こった。辺りに煙が立ち込める。
煙は天井が突き抜けていたため、広間に充満することなくすぐに天へ昇っていき、
視界はすぐに開けた。



 コロコロコロ・・・・・・

        カランカランカラン・・・・・・



 広間の中央に転がってきたもの。
 全員がそれに目を奪われた。
 ピエトロの頭上で輝いていた知恵の王冠がはずれ、床を転がってきたのだ。
 広間の中央には誰もいない。


「ま、まずい、知恵の王冠がッ!」 
 頭にのっていないのを確認し、広間の中央に走るピエトロ。

「俺様の知恵の王冠、いっただきッ!」
 ロボットの腕をのばすガミガミ魔王。

「全員、知恵の王冠をお守りするのだッ!」
 走り出す兵士たち。

「大変、ラリス!」  「あぁ!」
 双子も知恵の王冠に手を伸ばす。

 ピノンもナルシアもルナもマルコも、広間にいた全員が大切なものを守ろう
と知恵の王冠に手を伸ばした。




 ただ1人、エレナだけはその場を動かなかった。
 寒い。カタカタと体が震える。
「あなたはピエトロを裏切り、ポポロクロイスを滅ぼすわ」
 脳裏によみがえるのはアリスの言葉。
 瞬きの間、闇の先にエレナが見たのは、地獄の業火と、全てを死に返す氷の大地

「だめ・・・・・・」
 エレナは叫んだ。

「お願い、やめてッ!!!」

 しかし、エレナの声は誰の耳にも届いていない。
 みんなが知恵の王冠に手を伸ばす。


 ピシッ・・・・・・


 みんなの目の前で・・・・・・知恵の王冠にヒビが入り・・・・・・





パリンッ





 ・・・・・・知恵の王冠が2つに割れたのだ。


「うそ・・・・・・」
 全員が動けなかった。
 愕然と割れた知恵の王冠を見つめている。
 国の宝が壊れてしまうなんて、誰も思っていなかっただろう。
「知恵の王冠が・・・・・・私は大変なことをしてしまった」
 ピエトロが2つに転がる知恵の王冠の前に膝をついた。肩が震えている。
「お、おおお、俺様は何もしてないぞ、帰るッ!」
「待てッ!」
 ドン将軍の呼び声を無視して、ロボットを飛行モードに変形させて夜空へと
消えるガミガミ魔王。誰も追う気にはなれなかった。

 崩れた広間には重い沈黙が流れる。



 ドンとゴンの命令で兵士たちは退室させられた。ピエトロに心を痛めながら
広間から次々と立ち去っていく。
 エレナはピエトロに何と声をかけたらいいかわからず、黙ってラリスとリリス
の側に立っていた。
「ナルシア。ピノンたちをつれて部屋へ戻りなさい」
「はい」
 ナルシアはうなづくと、ピノンとルナとマルコを連れて広間を後にする。
エレナたちは最後までピエトロの側に突っ立っていた。
「エレナ、お前もラリスとリリスを連れて部屋へ戻りなさい」
「にいさま、私・・・・・・」
 エレナは迷っていた。アリスのことをピエトロに相談するべきかどうか。
「戻りなさい!」
 ピエトロに強く言われ、エレナは一礼すると双子を連れて広間を出た。
 にいさまの心の痛みが伝わってくる。
 エレナは唇をかみしめた。




  



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