第8話  ガミガミ魔王城2、絶対無敵超高速飛空艇・怒涛空王丸ッ!
─ そ の 2 ─




「さんざんだったわ・・・・・・」
 エレナは空を仰いだ。青い空、流れ行く白い雲。そして、目の前にはガレキ
の山、山、山・・・・・・。立ちこめる焦げ臭い匂い・・・・・・。
 エレナはため息をつき、それから服についた汚れを叩いた。しかし落ちそうに
ない。

 自爆した城は、完全に吹き飛んでしまったかと思いきや、自称城下町付近は
爆発に巻き込まれずに無事だった。
 手分けをしてデフロボたちが森に被害が拡大しないようにあちこちを駆け回っ
ている。
 ガミガミ魔王はデフロボたちに指示を出すこともなく、ただボー−−ッと自分の
右腕とそこにくっついた鉄板を見つめている。
 エレナはガレキに腰を降ろして物思いにふけっているバファンに歩み寄った。
「ラリスとリリスがさらわれたわ。どうしよう!」
「・・・・・・」
 バファンは何も答えない。
「バファン?」
 エレナは彼の顔を覗き込み、返事を黙って待った。その沈黙が嫌で、バファンが
仕方ない感じで口を開いた。


「……さらわれたんじゃない。行くべき場所へ行ったんだ」

「でも嫌がってた!」

「でも最後には受け入れてただろ!!」

「私は納得していない!!!」


「追いかけるな!!!」





 エレナもバファンも不安だらけで取り乱し、精神的に爆発寸前で大声で言い合った。
 バファンはキッとエレナを睨み、立ち上がった。剣を引き抜く。
「追わせるわけにはいかない。オレは闇の世界の王ダーナの兵士だ。
 闇の世界のためならあんたと刺し違えても構わない」
 エレナも剣に手を掛けたものの剣を抜けずにいる。
 緊迫した空気。2人がにらみ合い、時間が過ぎていく。

 その静寂に割って入ったのはガミガミ魔王だった。

「でもよ、にーちゃん。お前はダーナに見捨てられたんじゃねーのか?」
「!」
 その言葉がよほどショックだったのか、バファンは剣を落とした。再びガレキ
に腰掛ける。
「そう・・・・・・なんだよな。子供2人、闇の世界に連れて行くことも出来ない、
 ダメなヤツなんだよ、オレは。もう帰ってくるなって言われたし・・・・・・。オレ
 はこれからどうしたらいいんだ?」
「知らないわよ、自分で考えなさい。あなたに私は止められない。
 私は行くわ、闇の世界へ!!」
 エレナはキッパリと言い放つとバファンたちに背を向けた。
 あんな強引な別れ方・・・・・・納得出来るはずがない。

「2人が連れて行かれたのは闇の世界。闇の世界のことなら聞いたことがあるわ。
 ダーナ王の治める邪悪な魂の眠る場所・・・・・・」

 バファンを振り返る。
「ねぇ、私を闇の世界へ連れてって」
「はっ、バカ言うなよ。オレは力を取られて捨てられたんだぜ。行く力はない」
 エレナは腕を組み考えた。
 闇の世界に行ったことのある人物なら知っている。1人はサニア、エレナの
母親だ。氷の魔王と共にサニアは闇の世界に行った。それを助けに闇の世界へ
向かったのがピエトロ、エレナの兄だ。2人に聞けば闇の世界に行く方法が
わかるだろう。しかし、サニアは今は遠い遠い竜の国に住んでいる。そして、
ピエトロは・・・・・・エレナは今、大好きな兄さま、ピエトロに会いたいとは到底
思わなかった。
 もっと他の方法で闇の世界に・・・・・・。
「あっ」
 エレナが短い声を上げた。
「ガミガミ魔王さん!」
 難しい顔をしていたエレナはパッと目を輝かせ、ガミガミ魔王に近づく。
「そう言えば、あなたって兄さまと一緒に氷の魔王を倒したのよね。もしかして
 闇の世界の行き方を知ってたりする?」
「あーー、知ってる」
 面倒くさそうに答えるガミガミ魔王。そんなことより自分の右手の方が大事の
ようだ。
「本当!? 教えて!!」
「世界を破滅させてお前が邪悪な魂になりゃ・・・・・・」
 ガンッ
 エレナはガミガミ魔王を殴ろうとしたが、鉄板というガミガミ魔王の右手の盾
がそれをさせなかった。殴ろうとした拳を痛そうに振るエレナ。
「・・・・・・ラダックだ」
 ガミガミ魔王は静かに言った。
「ここからはるか東に住む仙人に会えば、行ける」
「連れてって
「ばかやろう
 さすがにオーケーしてくれはしない。
 しかし、行く方法は分かった。ラダック仙人に会えば闇の世界へ行けるのだ。
ラリスとリリスの連れて行かれた場所へ。
「……あ」
 エレナはガミガミ魔王の手の鉄板を見つめ、ふと何かに気付いた。
 よ く よ く 冷 静 に 考 え れ ば ・・・・・・
「ねぇ、それって、手が鉄板にくっついてるんじゃなくて、
 手袋が鉄板にくっついてるんじゃない?」







 そう言われ、ガミガミ魔王は手袋を外した。手袋と鉄板はくっついているものの、
ガミガミ魔王本人の手には何も問題ない。
「なーーーんで気が付かなかったんだ?」
 喜ぶのを忘れて、目をパチクリさせるガミガミ魔王。エレナは軽く微笑んだ。
「良かったわね。じゃあ2人共、私は行くわ」
 エレナは、デフロボがわざわざ持ってきてくれた自分のトランクを受け取ると
2人に背を向けた。
「私は闇の世界へ行かなくちゃいけないの。こんなところでグズグズしていられ
 ないわ」
「ま、待てよ、オレも行く!」
 バファンがエレナの背中に怒鳴った。
 エレナが振り向く。
「行って・・・・・・オレに出来ることなんて何もないと思うが、あんたについて行くよ」
「えぇ、行きましょう」
 エレナはそれがわかっていたようにうなづいた。
 そんなエレナとバファンをイライラしながら見ている漢が1人いた。
「ちっ、しゃーねな! ラダックのところまで俺様が連れてってやらぁ!!」
 ガミガミ魔王が立ち上がる。1体のデフロボが演出にとガミガミ魔王の周りに
紙ふぶきをまく。
「本当!?」
 パッとエレナの顔が輝く。
「いいか、ラダックのところまでだぞ。闇の世界までは行かないからな!」
 それでも、それだけでも十分うれしい。

 道は開けたのだ。

 ガミガミ魔王はあごに手をやり悪人並みの笑みを浮かべた。
「乗せてやろう。
  俺様の超高性能高速飛空艇にな。タダで!!!」






  



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