第9話  フンバフンバ村、男を賭けた女の戦い
─ そ の 2 ─




 どこともわからぬ森の中・・・・・・。


「説明しよう! 俺様たちは、謎の武装集団に襲われ、緊急着陸したッ!」


墜落、とも言うがな」
 バファンの一言にガミガミ魔王は唸った。
 しばらく放心状態だったエレナは、深呼吸して落ち着くと、コントロールルーム内を
見渡した。かろうじて活動しているのはガミガミ魔王とバファンとエレナぐらいだ。
前方のスクリーンには砂嵐が映し出され、ザーッという音がコントロールルームに響く。
「おい、空王丸の損害はどれくらいだ?」
 ガミガミ魔王がデフロボに声をかけるが、デフロボたちは全て着陸の衝撃で目を
回していた。間一髪シートベルトが間に合って本当に良かった、と、シートベルトの
大切さを実感するエレナ。
「ったく、繊細なロボットたちだな」
 そう言うと、自らパネルを触り、確認に入る。
「うむ、エンジン、動力部には異常なし。火の手は上がってなさそうだな。
 外に出てやられた主翼を見てみねーと修理出来るかわからんな」
「外へ出るの? この船を襲った人たちがいるのに!?」
 エレナが眉をひそめる。かなり嫌な予感がする。
「しょうがねーだろ。ほら、とっとと出るぞ」
 もしも、損害が激しく修理が不能ならば、剣の山へ行く道が絶たれることになる。
ガミガミ魔王を先頭について行くエレナは、またすぐに飛べるようになればと心から
祈った。
 通路を歩き、外への扉の前でガミガミ魔王が立ち止まる。
「よし、エレナ。先に行け」
「なんで私なのよ?」
「剣の山に行きたくねーのかーー?」
「うっ・・・・・・わかったわよぅ!」
 ハンドルを回し、重い扉を開ける。
 そこは密林のジャングルだった。木々の種類はクロコネシアのものとは全然
違う。エレナはその湿った大地に降り立った。生暖かい空気を吸い込む。
 空王丸を見上げる。ジージーと音を立てながら煙を上げているものの、ガミガミ
魔王の言った通り、火の手はあがっていないようだ。損傷具合は、詳しく調査して
みないとわからないだろう。
 エレナは辺りの気配を感じて剣に手を掛けた。デッキでも感じた、空王丸を包む
気配は消えていない。
「囲まれてるな」
「そうみたい」
 神経を尖らせているバファンにエレナもうなづく。


 カサッ


 そして、茂みの中から一斉に槍や弓を持った者たちが姿を現した。
 軽く30人は越えているだろう。褐色の肌をし、露出した肌に刺青をしていたり、
手首や足首には貝や木の実で作られた装飾品をしている。この辺りの原住民の
ようだ。異様な気配は、この者たちかららしい。
「どうしたの、ガミガミ魔王さん?」
 エレナがガミガミ魔王を振り返る。彼の顔は青く、自慢のヒゲはしょんぼりし、
足をガクガクさせ、その場に立っているのがやっとという感じだ。先ほどまでの
元気さはこれっぽっちもない。

 その時、原住民のうちの1人の老人が一歩前に出てきた。

 そして、こう言った。


「神様、帰ってきやがった」




「「「煤i ̄○ ̄| | | 」」」



3人はその場に固まった。

「か・・・・・・」
「かみさまぁ?」
 エレナとバファンがワンオクターブ高い声を上げ、ガミガミ魔王と密林に住む
原住民たちを交互に見つめる。原住民たちがうれしそうなのに対し、ガミガミ
魔王は「この世の終わり」という顔をしている。
 原住民たちの態度を見ると、どうもこのガミガミ魔王は「神様」ということ
らしいのだが・・・・・・。
 村長を先頭に村人たちが3人の前にお酒や果物などを山のように置く。
「神様、このフンバフンバ村に帰ってきやがった」
「ま、待て。空王丸を攻撃したのはお前らか?」
 しゃべるのもやっと、という感じでガミガミ魔王が口を開く。
「そう。神様の船、叫んでも降りてきそうになかったから、降ろしてやった」
「ざけんな、殺す気かッ!」
 ガミガミ魔王が怒鳴る。こんなにうろたえるガミガミ魔王をエレナは見たことが
なかった。 そんなにこの住人たちが怖いのか? 少し礼儀作法が違うところが
見受けられるが、貢物までし、慕われているようだが・・・・・・。

「神様、村 来る。娘のナルンガと結婚しやがれ!」

「ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!
 近寄るなっっっつっっってんだろッ!!」

 ガミガミ魔王が狂ったような声を上げ、背中のランドセルを全開にしミサイル
発射態勢に入る。慌てて止めるエレナ。
「ちょっと、やめなさいよ」
「お前には俺様の気持ちなどわからんだろーな」
「なんなの、一体?」
 村長の隣に1人の女性が現われる。この人がどうやらナルンガらしい。たくま
しく太った女性は、ガミガミ魔王に向けてウインクを放った。恐怖にガミガミ魔王が
ウインクを跳ねようと手を振り回す。
「あれがガミガミ魔王さんの婚約者?」
「バカを言うな。向こうが勝手にそう思ってんだよ」
「神様、娘と結婚する。これ以上待たせるな」
 村長の高い声が夜の帳が降りようとしている密林に響く。
「・・・・・・ッ!!」
 ついに堪忍袋の緒でも切れたのか、ガミガミ魔王が村人の前に男らしくドンッと
座った。

「いいか、お前ら、耳の穴 かっぽじってよーーーーーく聞け。

 俺様には既に愛するべき女と、

 しかも子供が2人も居る!!!!」




 そのガミガミ魔王の発言は、住人たちに特大のダメージを与えた。

「そ、そんな、神様・・・・・・」

 がっくりと膝をつく村長&「うぉーんうぉーん」と怪獣のような声で鳴く村長の娘。
「だから、お前ら、俺様のことはキッパリ諦めろ。俺様は神様なんて信じちゃ
 いねぇ。だから俺様はお前らの神でも何でもないってことだ」
 ガミガミ魔王はそれだけ言うと村人に背を向け空王丸に引っ込んだ。

 村人はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、また1人、また1人と帰っていき
最後に村長とナルンガが背中を丸めながら村へと帰っていった。






  



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