第9話  フンバフンバ村、男を賭けた女の戦い
─ そ の 3 ─





 フンバフンバ村の住人が帰っていった後、ガミガミ魔王とバファンは
空王丸主翼の修理にとりかかった。石の砲弾が見事に命中し、右の翼が
変形してしまっていたのだ。
 ガミガミ魔王は1秒でも早くこの場を出発したいということで、いつもなら
デフロボたちに修理を任せるところを、バファンを助手につけ自ら空王丸の
修理にあたる。
 エレナはガミガミ魔王に言われて船内のロボットたちを見て回った。気絶、
と言うか、着陸の衝撃で目を回していたデフロボたちも徐々に元通りの活動に
戻っていった。コントロールルームにいたデフロボたちも元に戻り、復旧活動
にあたっている。数体、おかしな音を立てているヤツもいるが、他の救急班の
同僚によって医務室に運ばれて行き、元気になる。船内は特に大した被害も
ないらしい。
 船外も見て回ったが、矢があたった跡があるぐらいで、修理中の主翼以外は
問題ないようでエレナは安心した。正直、ここで先に進めなくなるのではと
思っていた。
「ねぇ、あとどれくらいで直りそう?」
 エレナは翼の上で溶接中のガミガミ魔王にたずねた。例の漢の接着剤でくっ
つければいいんじゃないかと提案してみたが、それは男のロマンに外れるらしい。
「そうだな・・・・・・。1時間ってとこか」
 不思議に思い、ガミガミ魔王が作業の手を止め、エレナを見下ろす。
 エレナはガミガミ魔王とバファンに手を振った。

「私、これからフンバフンバ村に行ってお土産を買ってくるわ。
 1時間以内には戻るから。それじゃ、頑張ってね


「「お前はアホか?」」



 ガミガミ魔王とバファンの呆れた声を無視して、エレナは密林へと入って
いった。ちゃんと道もあり、看板も立っていたので、迷うことなくエレナは
フンバフンバ村へと辿り着いた。珍しい土地に着いたのだ。その地ならで
はのお土産も手に入るだろう。エレナは、お土産に喜ぶ兄の姿を想像し、
口元を緩ませた。

「うっわーーー。大きな像!!」

 エレナは村の広場にある石像を見上げて第一声を発した。
 ──まさに、ガミガミ魔王の像!
 ずいぶん古い像らしい。エレナはポカンと口を開けながらその像をしばらく
見学していた。像の周りにはお供え物があったり、かがり火も昼夜を問わず
燃えている。
「へぇー、本当に神様として崇められているのね」
 そして1人感心しながらエレナは村人と2、3会話をし、お土産を売って
いそうな店を聞いた。
 辿り着いた店で、彼女は右から左までとりあえず全商品購入した。有無を
言わせない豪快な買い物に店の主のやせた男も少し呆れている。
「それじゃあ、ポポロクロイスのピエトロ王あてに送ってくれるかしら?」
「わかった、送ってやる」
 店主がうなづく。エレナは礼を言うと店を後にしようとしてふと足を止めた。
「あら、かわいいーーー」
 花飾りで作られた衣装が目にとまる。白とオレンジを主体にワンポイントを
様様な色の花で飾られた衣装。ここの女性専用らしく、さすがにエレナには
サイズが合わない。
「・・・・・・実はそれ、村長の娘の結婚衣裳」
 気まずそーに店主が呟く。
「え、あ、そう・・・・・・。それじゃあ私、失礼するわ」
 そろそろ戻らなければ、空王丸の修理も終わるはずだ。
 エレナは店を出て、再びガミガミ魔王──村人に話を伺ったところ、神様の
名前は「ウンガガボッカフンガ−」様という、まったく謎であまり深く知りたくない
──の像のところまでやって来た。
「……?」
 ふと立ち止まり辺りを伺う。
 パッタリと住人がいなくなってしまったのだ。
 静かで像の側のかがり火のパチパチという音が妙に耳につく。
 エレナは殺気めいた気配に身構えた。
「・・・・・・上ッ!?」
 そう気付いたと同時にエレナは反射的に横へ転がった。


ドスンッ


 鎖のついたトゲトゲの鉄球が今までエレナのいた場所に振り下ろされる。
「な、なに!?」
 慌てて起き上がり、剣の柄に手を掛ける。
 気付いた時には辺り一周、フンバフンバ村の住人にエレナは囲まれていた。
激しい太鼓の音が大地に響く。
 エレナの前に鉄球を持つ女が現われる。エレナを狙った人物。
 それはフンバフンバ村の村長の娘だった、確かナルンガと言ったか。殺気は
この女性からだ。
「一体何なの!?」
 理由もなしに村人に危害を加えるわけにはいかない。剣を抜けずにいるエレナ。
ナルンガは構わず鉄球のついた鎖を軽々と振り回した。


「お前、殺してさしあげて、私、神様と結婚する!!」




「・・・・・・」
 エレナはつい先ほどのことを思い出していた。



『俺様には既に愛するべき女と、しかも子供が2人も居る!!!』



 一生懸命、頭を働かせ、1つの答えを導き出す。
「・・・・・・えっと」
 も し か し て ・・・ ・・・
 私ってば、その「愛するべき女」と勘違いされてる!? 
 
されているのね!!! 煤i ̄○ ̄|||




 エレナは、村の異様な雰囲気の中、1人ガミガミ魔王を呪った。






  



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