第0話2
「はじまりの、瞳の扉のその向こう側」
話は、エレナ、アイナ、そしてモンバの3人が乗船する前。
ダカート号が海賊をしていた頃にさかのぼる──。
「大漁、大漁〜ッ!!」
机の上に広げられたのは、どーんッ!と、金銀財宝・お宝の山。
船長室(現在エレナの部屋)には、ダカート号クルーの主要メンバーが揃っていた。
彼らは海賊、今しがた航行中の船を襲ったばかりだった。
満足そうにドノバンが笑い、ダイクがうれしそうに、金貨を手に取り、本物かどうか確かめる。
「よぉし!! 今回は上々だな」
「久しぶりの稼ぎなんだナ」
「貧乏海賊ともしばらくお別れできますね」
「よーし、お前ら、今日は宴会するぞーーーー!」
「しかし……」
と、眉をひそめるのはカーティスだ。
「さっきの商船ですが、私たちに抵抗することなく、あまりにも簡単に金品を差し出しましたね」
「確かに、何か裏があるのかもしれません」
カーティスの言葉に、ランバートも顎に手を当てて考えるようにうなづいた。それを聞いた
グーリーの顔つきも変わるが、ドノバンは重い空気を退けるように手を叩いた。
「お前らは心配しすぎなんだよ。久し振りの収穫だ。素直に喜べ」
「わたくしは、お酒が飲めればそれでOK!!」
すでに1人宴会を始めたエドガーが酒瓶片手に前に出てきて、話はそれで中断した。
ま、考えても仕方無い、何かあったら、起こってから考えればいい。そんな、その日暮らしの
毎日を送っていた海賊船・ダカート号。
お宝選別中のダイクは、宝の山から、小さな宝石箱を手に取った。美しい装飾が施された
その箱には鍵がかかっており、振るとカラカラと音がした。
「カーティス、これを開けてほしいんだな」
「どれどれ」
カーティスはダイクから宝石箱を手に取ると、部屋の隅の椅子に腰かけた。宝石箱の側面、裏側を
調べ、次に懐から針金を取り出し、鍵穴を触り始める。
「船長、失礼します!」
他の者が金貨や宝石類を分けていたところへ、見張り役のビリーが船長室へ飛び込んできた。
十分遠くに逃げたつもりだが、商船を襲った後は、特に警戒が必要だ。一瞬、緊張が走ったが、
ビリーは全く別の要件だった。
彼はランバートに用事があったらしい。
「ランバート。悪いんだけどさ、トードを診てやってほしいんだ」
「おやおや、そんなに暴れませんでしたが、ケガでもしましたか?」
「いや、くしゃみが止まらないんだって」
ランバートは腕を組んだ。
「トードの鼻、ですか……。ただの風邪か、それとも何かの前兆でしょうか。わかりました。すぐに
医務室に戻ります」
「トードを連れていくよ」
ビリーがうなづき、部屋を出ていく。ランバートは船長に向き直った。
「宝の山分けは平等にお願いしますよ」
そう言うと、ランバートは部屋を出て行った。
一方そのころ。
ダカート号食堂では、ガストンが例の扉の修理にあたっていた。最近、開けるたびに
ギィギィと重い音がし、開けづらいのが気になっていたのだが、とうとう開かなくなってしまっ
たのだ。
潮風にあたって、錆ついて動かなくなってしまったのだろう。
機関室から持ってきた道具箱を開き、ガストンは扉の前に座った。
「ふぅむ」
ベルがガストンを覗き込む。
「どうだい、直りそうかい?」
「あぁ。たいしたことない。油を差せば直るじゃろ」
「そうかい。それじゃ、私は宴会の準備があるから、あとは頼んだよ」
「任せておけ」
しばらくガチャガチャと扉の金具や淵をいじっていたガストン。ベルは、特に気にすることなく
隣の厨房で夕食の準備を進める。
ガストンが、重い腰を上げた。
「よし、これで大丈夫じゃろう」
キィィィィ……
扉は、静かに開いた。
もちろん、扉の向こうは、果てしなく続く青い海……のはず!!
「……???」
ガストンは固まった。
ヤっさんだよ
「[ だれだ??? ]」
バタンッ
ガストンは慌てて扉を閉めた。
「いやいや、つかれておるんじゃろう。ワシ、つかれているんだ。幻覚幻覚」
そう自分に言い聞かせる。だって、ここは船の上だし、この扉は『どこでもドア』なんかじゃないし。
「おや、早かったね、もう直ったのかい?」
ベルが厨房からひょっこり顔を出す。笑顔のベルに、対照的に顔色真っ青のガストン。
「ベル、塩じゃ。 塩を持ってこい!! 清め、祓わなければッ!!!!!」
なにか混乱しているガストンに、首をかしげるベル。
「んもう、何を言ってるんだい。開くようになったんだろ。どれどれ……」
「うわーーーー、ベルーーーー! 開けるなーーーーーーーーッ!!!!」
ベルが食堂に風を入れようと、ガストンを押しのけて、扉を開けた。
「[ ……だれ? ]」
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