第2話2
「ともに歩く、だからこそッ!!」





「図星ですか、エレナ姫サマ」

「な、なななななッ……!!」
 エレナは驚きを隠せず、水から出たコイのように口をパックパックさせながら
一歩後退した。
 彼女はわざと下の名前を言わずにいたのだ。
 別に「パカプカ」が恥ずかしいというわけではない。いや、ちょっとは恥ずかしい
けれど、だけど、その名を誇りに思っている。
 しかし……。
「なんでわかったの!?」
 カーティスは作業の手を止め、チラリとエレナを見ると、再び地図に視線を落した。

「世界中の国の女王様とお姫様の名前ぐらいは暗記してますんで

「……(;一_一)」

 軽蔑を込めた目でエレナがカーティスを見る。
 ヤバい視線を感じて慌ててカーティスが付け加えた。
「あぁ……胸にかかげる紋章を見ればわかりますよ!!」
 そう言われ、エレナは慌てて胸元のブローチを隠したが、時、すでに遅しなわけで。
「海のど真ん中で護衛もつけずに1人で何をされてるんですか? 迷子? 
 それとも家出?」
「……家出というより、『城出』かしら」
 どんどんエレナのテンションが下がっていく。
「ねぇ。みんなは、もう知ってるの?」
「さぁ? 直接聞いてませんが、ランバートはあなたの素性に気付いているみたい
 でしたけど後のクルーは知らないでしょう。私から言うつもりはありませんし」 
 カーティスは、地図を広げ、海のど真ん中の現在のダカート号の位置を指差した。
「今の位置は、このあたり。そして、西に行った、ここが、パーセラ。ポポロクロイスの
 港町といったら、ここでしょう。あなたもこの港から発たれたのではないですか?」
 エレナは、海図をぼんやりと眺めた。
 何日も航海し、遠くまで来たと思っていたが、大きな大きな地図の上では、現在地と
パーセラは微々たる距離だった。
「その紋章といえば、『ポポロクロイス王国』。小さいながらも、平和で、農耕と酪農に
 恵まれた豊かな国と聞きます。その国を治めるのは、超有名人・世界を幾度となく
 救ったことのある英雄ピエトロ。そして、そのピエトロ王のかわいい妹君が……」

「やめて!!」

 エレナの叫びに似た声に、カーティスは驚いて言葉をやめた。
 エレナの唇が震えている。

              「せっかく忘れかけてたのに……」

      

「にいさまのことを思い出させないでよッ!!」



 バタンッ

 エレナは海図室を飛び出した。





    


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