第2話4
「ともに歩く、だからこそッ!!」






       ドキドキ ドキドキ ……

  


「まぁ! 大きな港町ね!」

 うれしそうにドノバンの横に立ち、港を見渡すエレナ。
 船はゆっくりと港へと入っていく。
 エドガーの操縦の腕に満足しながら、エレナはふとドノバンを見た。
 ガクガクブルブルと震えている。
「あら、顔色が悪いけど、体の具合でも悪いの?」
「え? いえいえ……こんなに正々堂々と港に船をつけたことなんて、ないもんで」
 ひきつった笑顔を振りまくドノバン。
 グーリーが話を続ける。
「ダカート号は海賊船でしたから、まともな港に入れば捕まってしまうんで、上陸するときは
 船を海に停めて、小舟でこっそり港に入ったり、ちょっと治安の悪い『裏口』に停めたり
 してましたからね」
 そんな説明を聞いたエレナは強気に笑って、ドノバンの背中を叩いた。
「もうダカート号は海賊船じゃないのよ。堂々としてなさいッ!」
 エレナに一喝されて、ドノバンは「ヘイッ」と小さく答えた。

 そこは、エレナが言う通り、大きな港町だった。
 ポポロクロイスのエレナが旅立った港町パーセラより大きい。
 町は活気にあふれ、人々の明るい声が飛び交う。


   
「船長ー。停泊料ですが、1時間1000円とか言ってるんだナ」
「高ぇな。ちょっとドスの効いた声で脅迫して、100円にまけてもらえ」
「了 解 ☆」
「そういうことをやめなさいっていってるのよ私は」
 
 ……とまあ、それでもダイクの交渉もあって、そこそこの値切りに成功し、ダカート号
船員の上陸の許可が下りた。
「じゃ、さっさと用事を済ませて出航するぞ。
 エレナさんの部屋の家具を買わないといけないから、留守番以外のヤツは全員運ぶのを
 手伝え」
 ドノバンの言葉に、ベルが手を挙げる。
「食糧を買いたいから、こっちにも人手をまわしてもらえるかい?」
「私は薬の調達に行きたいです」
「ワシも、船の部品が欲しいんじゃ」
「では、わたくしは、お酒を買いにいきましょう〜♪」

 ドカッ バキッ   (※エドガーが袋叩きにあっている音)

「おい、お前ら、やめろッ!」
 ドノバンの一声で、全員がぴたりと止まった。
 全員がエレナを振り返る。


 エレナは、ダカート号にレッカーして運んでもらった自分の船「フライヤーヨット」に
別れを告げているところだった。
「エレナさん、その船はいかがしましょう?」
「この港でしばらく預かってもらうわ。お世話になった『ポストフ造船所』あてに
 手紙を書いたから、引き取ってもらうことにするわ」
 エレナはもう一度フライヤーヨットを仰いだ。



「私をここまで連れてきてくれて、どうもありがとう」













 しばらくして。








ああ



 ン 
   ッ!
 

 どんどん船内に運ばれてくるのは、ちょっとお高そうな家具全般。
 すべてエレナの部屋へと運ばれていく。
 ダイクがそろばんをはじきながらため息をついていたが、まぁ、みんな見て見ぬフリ。

 全員の点呼も終わり、船はほんの数時間の停泊で港を後にした。




 港も出て一息ついたところで、ドノバンがビリーを呼び止めた。
「投票も全員終わってるだろ。ビリー、悪いがトードと一緒に開票しといてくれ」
「アイアイサー!」
 ビリーが元気に返事をして、船倉に姿を消す。
「あの、ドノバン……」
 エレナはドノバンに不安そうに声をかけた。
「ヘイ、なんでしょう?」
「あの、私、大事な話があるの。みんなを集めてもらえないかしら」
「ちょうどよかった! 俺らもエレナさんに大事な話があるんで。じゃ、30分後に
 食堂に集合するように声をかけてきます」

 立ち去るドノバンの背中を見て、エレナは覚悟を決めたようにうなづいた。






    


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