第3話3
「ダカート号は、もえているかッ!」
というわけで、ダカート号は一路ガストンの故郷へと向かったのだが……。
その島が目の前に見えているにもかかわらず、ダカート号は島に近づけずにいた。
周りでは、豪華客船が何台も島に入ったり、出たりしている。
しかし、ダカート号は立ち往生だ。
島の手前で、機関を停止し、錨を降ろしたダカート号。クルーは全員、甲板に集まって
いた。
「なんで、入港許可がおりないのよッ!?」
エレナが高い声で言う。
「いや……おりる、おりない以前の問題なんだナ」
苦笑しながら、あごをなでるダイク。
「あの島は、有名な観光地で、お客さんがいっぱいなんだナ。ダカート号のような
大型船は、1か月以上前から予約を入れとかないと港に入れないんだナ」
「まぁ。ガストンの故郷ってそんなところなの?」
「いや、昔は静かなところじゃったんじゃが……」
「仕方ねぇ。ちと遠いが小舟を出して、島に降りましょう。おやっさんがいれば
なんとかなるでしょう」
ドノバンの提案に、エレナはうなづく。
「そうね。それじゃあ、小舟には全員乗れないけど、誰が島に行く?」
「はい、はい、はい、はーーーーいッ!!」
男全員が一斉に元気よく手を挙げた!!
「いやぁ、猫耳ワールドか、楽しみだなぁ」
「猫耳喫茶に入らねば……」
「ネコの人が作ったお酒はうまいに違いない!」
「キャッツカフェで、特大パフェ食べるんだナ」
「……にゃんこ」
「ニャンニャンアイランドー♪」
「ネコさん、萌え〜〜〜〜!!!」
なんだこの男共の異様な盛り上がり方は。
エレナは深いため息をついた。
「いいわ。私とガストンの2人で行ってくるから」
「待ってくださいッ! 船は誰が漕ぐんですか!?」
カーティスが、慌ててエレナに詰め寄る。
「冗談言わないでちょうだい。私だって1人で航海してきた身よ。船ぐらい漕げるわよ。
それに、今回は観光じゃありません! アイナの乗船が目的よ。 観光したいなら、
個人で予約とりなさい、予約!」
ムリなことを言うものだ、うちのボスは。
エレナは踵を返すとガストンを呼んだ。
「じゃ、行きましょうか」
「ヘイ、ボス」
ガストンがフッと鼻で笑って、エレナの後を追う。
「そんなぁ……」
がっくりと膝をつく男たちだった。
そして、エレナとガストンを見送ったダカート号クルーたちは、戻ってくるまで暇……
かと思いきや。
「あ〜ら、カーティスさん。海パン姿で、どちらへお出掛けなのかしら?」
ギクッと、柱の陰でコッソリ準備体操をしていたカーティスが固まる。
「べ、ベル……。悪いが、そこをどいてもらおうか」
「ふん、どかないよ。ボスの命令だもの。 っていうか、あんたの考えなんて、まるっと
お見通しだよ!」
「ふ、ならば仕方無い!」
カーティスは、不敵な笑みを見せると剣を引き抜いた。剣が太陽の光を受けてギラリと輝く。
他の者たちから「おぉ!」という歓声があがる。
カーティスが、ついに本性を現したッ!!
「私は、お前を倒して、泳いで島に上陸する!
そして、猫耳お姉さんとお友達になるんだーーー!」
ぽっぽろぽっぽろ、ぽぽーろ。
「船長ー。 コイツを本気で殴ってもいいですかー?」
言うが早いかベルはこぶしを振り上げた。
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