第3話5
「ダカート号は、
えているかッ!」




 せ か い の う み は 、 あ た い の も の よ ♪

「うん、がんばる。アイナ燃えちゃう〜〜!!」
 と、気合い十分に燃えてるアイナに、慌ててガストンは訂正した。
「待て待て落ち着け。 実はじーちゃん、海賊をやめたんだ!」

「えぇぇぇーーーーーーーーーーーーッ!?
 ……どうりで最近、『暴れ猫ガストン』の噂を聞かないわけだね」

 アイナの耳がしょぼんと垂れた。実に残念そうだ。
 呆れたようにエレナが肩をすくめる。
「ガストン。あなたに、そんな通り名があったの?」
「海賊時代は、ま、いろいろと。……ははは」
 エレナと視線を合わさないようにして口の端をひきつらせて笑うガストン。
うぉっほんと、咳ばらいをして間をおくと、ガストンは改めて後ろに控えるエレナを
紹介した。
「アイナ、この方はエレナ・パカプカさん。 うちの『ボス』だ。今、ダカート号は
 彼女の旅に同行中だ」
「よろしくね、アイナ」
 エレナがにっこりとほほ笑み、手を差し出す。つられて、アイナも手を差し出し、
エレナの手を握った。
「……ボス?」
 アイナは、ボスと紹介された女性をじっと見た。
「そうよ。縁があって、ダカート号に乗ることになったの。今は、みんなで伝説の剣を
 探す旅をしているの。一緒に行きましょう!」
 凛々しいエレナの姿に、アイナの目がキラキラと輝く。
「うん 伝説・お宝・冒険の海! そして、やっぱり女の船乗りかっこいいーー

  
   まぁ、オールオッケー。

「よしきた、アイナ。すぐに荷物をまとめろ。ワシもあいさつに行く」
「えぇ? 今すぐなの!?」
「そうじゃ。船を待たせてあるんじゃ」
「う、うん。わかった!」
 アイナが桶を手に取り、家のほうに駆けていく。
「ふふ。元気いっぱいの、かわいいお孫さんね」
 ほほ笑むエレナに、ガストンは頭を下げた。
「ワシは、知り合いに挨拶をしてきます」
「えぇ、ここで待ってるわ」
 ガストンも、アイナの後を追って駆け出した。








「……頭いてーー」
 ムクリと、カーティスは起き上がった。
「遅い。ようやくお目覚めですか」



 ──ダカート号、医務室。
 ベルに思いっきり殴られ、ご臨終だったカーティスは、医務室に運ばれていた。
 ランバートが読んでいた本をパタリと閉じる。カーティスを一瞥し、机の上の紙に
何やら書き込んだ。意識もはっきりしているし、診察する必要もないと判断したらしい。
「さて。アイナも乗船しましたし、もう出航ですよ」
「えぇ!? もう!? おやっさんも故郷で1泊ぐらいしてこればいいのに!」
「執着しすぎですよ」
「なんのためにこの島に来ようと提案したんだ私は!」
「おやっさんのためです。 ほら、それだけ元気だったらもう大丈夫でしょう。
 グーリーが甲板でお待ちです。あなたが行かないと錨があげられないんですから」
「そ、そんなぁ……」
 カーティスはがっかりと肩を落とし、トボトボと医務室を出て行った。




「ダカート号、出航!」

 エレナの力強い声とともに、ダカート号が動き出す。

「さようなら、にゃんにゃんアイランド。さようなら、猫耳おねーさん……」
 カーティスは船尾で、未練たらしく島を見ていた。
 夕日に赤く染まる島が、なんとも美しい。
「ま、しょうがないか。部屋に戻って、航海日誌でも書こうっと」
 と、踵を返した、そのとき。
 
 たたたたた……

「ん?」

 現れた少女に、カーティスが振り返る。

 アイナは、船尾の手すりにしがみつき、小さくなる島を見つめた。
 空は茜色から紫色に変わりつつあり、大きな夕日が島の向こうに沈もうとしている。

 離れていく故郷。
 海に憧れていたといっても、祖父と一緒にいられるといっても、やっぱり故郷を離れる
のはつらいものである。

 アイナは笑顔で島に手を振った。


      「さよなら……またね!」

 





    

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