第4話3
健康診断で、ゴーゴゴーッ!」



「なんで、お城にいたときより体重増えてるのよ。
 ははッ、そうね、チンさんJrの料理がマズイせいでお城にいた頃は、あんまり
 食べなかったのよ。   そうよ、ベルの料理が美味しすぎるのよ。
 そして、誰の誕生日でも記念日でもないってのに毎日、飲めや歌えの大宴会で
 ついつい食べ過ぎちゃうのが悪いのよ……。ヒロインがヤバいわ、太ったわ……」


 カーティスが階段を降りてくると、薄暗い大砲回廊で物思いにふけっているエレナに
出くわした。すでに彼女は、健診が終わったようで、なにか火の玉を漂わせながら
ブツブツと言っている。
「あの、ボス。通れないんで、どいてもらえますか?」
 そんな言葉に、我に返るエレナ。
「はっ! 私、通路をふさぐぐらい太ったの!? そうなのね!!」
「あ、いえ……。通路の真ん中に立ってるんで、通れないだけですよ」
「こうなったら、ダイエットよ、運動よ! 誰か剣の稽古に付き合ってくれるかしら」
「あぁ、甲板で3人ほど、暇そうに、ひなたぼっこしてますよ」
「そう、ありがとう。 それじゃ、お先にカーティス」
 エレナはほほ笑むと、軽い足取りで甲板への階段をあがっていく。
 カーティスはそれを見送ると、医務室の扉をノックし、中に入った。
 鼻につく、消毒液のにおいに目を細める。
 ランバートは机にむかって何かを書きながら、カーティスにイスに座るように促した。
「おい、ボスが妙なテンションだったぞ。大丈夫なのか?」
「え? ボスは、いたって普通に健康でしたよ。心臓が2つぐらいあるのかと期待して
 たんですけど、ま、ごくごく普通の体の持ち主で」
「お前はボスをなんだと思ってるんだι」
 ようやくランバートは書類を書き終わると、カーティスに視線を向けた。
「さ、聴診器をあてますので、胸をみせてください」


「はッ!!!!」


 カーティスはあることに気がついてしまった!!

「ま、まさか。ランバート。お前、ボスの胸を……」
「みましたけど、何か?」



 ドカーンッ!
 カーティスは(精神的に)痛恨の一撃を受けた!!

「な、ななな! そんなうらやましいことがあっていいのか!?
 あぁ、私も航海術を勉強するんじゃなくて、医術を専攻すればよかった!
 っていうか、これ読んでるポポロファンに謝ったほうがいいんじゃないのか!? 
 ボスの胸をみたって、土下座したほうがいいんじゃないのかッ!?」
 1人でわいわい騒ぐカーティス。
 自分は海図室で他人に騒がれるのを嫌うくせに、人の場所ではよく騒ぐ。
 ランバートはいたって冷静に言った。
「うるさい人ですね。病人が寝てるんですから、もう少し静かにしてください」
「え?」
 正気に戻ったカーティスは、背後のカーテンの引かれたベッドに気がついた。
 カーテンを開けると、そこにはビリーが横になっていた。



「ビリー、まだ治ってなかったのか」
 今の騒ぎで起きたのか、ビリーがうっすらと目を開けた。そして、起き上がろうと
したので、慌ててカーティスは彼の体を押し戻した。
「お前、本当に大丈夫か?」
「みんなに迷惑かけてゴメン。見張りに立たないと」
 カーティスとランバートは顔を見合わせた。
「薬を飲んだので、しばらくすれば落ち着くと思いますが、腹痛にもいろいろあります。
 もう少し様子をみましょう」
「見張り番のほうは、グーリーがシフトを組み直してたから、大丈夫だ。 大事にしろよ」
「うん、ありがとう」
 そう言い、ビリーはまた眼を閉じた。


 その後、静かに健康診断は進んでいった。

 





    

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