第4話4
「健康診断で、ゴーゴゴーッ!」
「お、終わった……」
よろよろと、エドガーは甲板に上がってきた。
ゲッソリとやつれ、力尽きたというか、燃え尽きたというか、足取りがフラフラである。
「終わったけど、またランバートに酒の量を減らされてしまった……。よし、今夜は
やけ酒をしよう」
懲りてねぇ。
エドガーは、船首の物見台で見張りをつとめるトードのところにやってきた。
あああ
「いやぁ、遅くなったな、トード。説教が長引いてしまって……。さて、見張りの交代だ」
トードがエドガーを振り返る。いつにもまして暗い顔だ。
「ビリーがまだ医務室から戻ってこない……」
「彼なら大丈夫だ。すぐに元気になる」
励まそうと、ポンと肩を叩く。
「へっくし!」
トードがくしゃみをしたので、エドガーは嫌な予感を覚えた。
「まさか、トード。鼻がムズムズするのか?」
「……少し」
「……」
「……」
トード → 鼻がムズムズ ⇒ なんだか良くないことが起こる
「い〜や、気のせい、気のせい。ただの風邪だ、大丈夫、大丈夫だぞ、トード」
しばらくエドガーは、トードと一緒に海を黙って眺めていた。
お酒でも飲めれば、気の利いた言葉も出てくるが、今はちょっとやめておこう、と
自粛するエドガー。
しばらくして、背後からグーリーの声がかかった。
「全員、ボスの部屋に集合だ!」
エドガーとトードは顔を見合わせると、エレナの部屋へ急いだ。
「まぁ、虫垂炎ッ!?」
ランバートの言葉に、エレナが声を上げた。
「痛みが右下腹部に移動してます。押さえると痛がるのをみると、ほぼ間違いないでしょう」
ビリー以外のクルーがエレナの部屋に集合していた。
全員がざわめく。
「ねぇ、じーちゃん。 ビリーの ちゅーすいえん ってどんな病気?」
アイナがガストンの服を引っ張りたずねる。
「あぁ。盲腸のことじゃよ」
そうガストンがアイナに耳打ちする。
「それで、手術が必要なのか?」
ドノバンの問いに、ランバートはうなづいた。
「そうですね。 うだうだ言ってるより、お腹を開いてみたほうが早いかと」
そう言われ、トードが驚き、変な踊りを踊り始めた!
ドノバンはトードの肩をつかみ静止させると、カーティスを振り返った。
「おい、次の島までは全速力でどれぐらいかかる?」
「そうですね、この辺りは島は多ですいが、無人島ばかりです。次の目的地の
島までは3日はかかります。前の島に戻るとしても、2日はかかるかと」
ランバートが腕を組む。
「腹膜炎を起こすことも考えられますし……」
しばらく沈黙が流れる。
ランバートは、意を決して顔をあげた。
「さっさと船内で手術してしまいましょう。船体が揺れないように波のない場所に船を
停めてください」
「私も手伝うわ。手伝わせて!」
エレナが立ち上がる。
「お願いします、ボス。 ベルはお湯をたくさん沸かしてください」
「わかったよ」
「よし、野郎ども! すぐにダカート号を動かすぞ!」
ドノバンの声に、全員が駆け足で持ち場に戻って行った。
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