第5話2
「ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」
「……」
「釣り針が歯に引っ掛かっているだけで良かったです。突き刺さっていたり、飲みこんで
いたら大変なことになってましたからね」
ランバートに釣り針を取ってもらったワニの少年は、甲板に正座して震えていた。
他のクルーが釣りの手を休めて、カーティスの釣ったワニを見ようと集まってくる。
ワニの少年は、船と、そしてクルーを見渡し、震え上がった。
(こ、この船は、海賊船ッス!!)
そこに、物見台で釣りをしていたドノバンも現れる。
ギロリとドノバンに睨まれ、ワニの少年はすくみあがった。
(こ、この人、怖ーーーーーーーーーーーーーーーッ↓↓↓)
「おい、誰だ、コレを釣ったのは!」
ドノバンが声を張り上げる。
「これはカウントなしだぞ」
「船長、ちょっと待ってください。1匹は1匹でしょう!」
ドノバンの論点の違う会話に、最下位になりたくないカーティスもつられて反論する。
グーリーが、大人げないカーティスの頭をこついた。
話をもとに戻す。
「船長。 こいつはクロコネシア人です。まだ子供ですがいかがしましょう?」
グーリーに聞かれ、ドノバンは腕を組み、空を仰いだ。
「どうするってなぁ……」
もう一度、ワニの少年を睨む。
「おめぇ、名前は?」
「モ、モンバ。……モンバッス!」
かすれた声で、モンバは言った。
「おい、ボスはどこにいる?」
「船尾でアイナと一緒にいますけど、呼んできましょうか?」
すかさずビリーが答える。ドノバンはうなづいた。
「そうだな。ボスの意見を聞いたほうがいい。呼んできてくれ!」
「アイアイサー!」
元気よく返事をし、ビリーが姿を消す。
クルーに囲まれ、モンバは縮こまっていたが、恐る恐るドノバンを見上げて、聞いた。
「あの、『ボス』って……? あなたが船長じゃないッスか?」
「ん? あぁ。この船には『船長』の他に『ボス』がいるんだ」
「ボスって、どんな人なんスか?」
「覚悟しろ。ボスはな、船長の何千倍も怖いぞーーーーーーーーーーー」
「残念ですが、ここから生きて帰れる保証はありません」
「こら、お前ら! 本当のこと言うんじゃねぇ! このガキが怖がるだろーが!!」
……煽る煽る。
モンバがビビるビビる。
そして、さらに、追い打ちがかかる。
「確かに、ボスを怒らせると怖いな。人間じゃないし」
「あぁ、海が真っ二つに裂けたな」
「……この前、火を吐いた」
「飲酒運転して、怒られて何度も瀕死の重傷を負わされました」
「ボスは、ワニの肉を食べてくれるかしら♪」
「そのあとは、ハンドバックを作るんだナ」
「……ゴクリ」
生唾を飲み込む。
モンバの精神は限界だった。
(デルボイ様! 村長! オイラ、ここで死ぬッスよーーーー!)
カチャッ
そのとき、背後の海図室のドアが開いた。
「なぁに、ドノバン。私、まだ5匹しか釣ってないのよ」
「あ、ボス!」
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
大絶叫とともに、モンバは気を失った。
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