第5話3
「ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」
「よいか、モンバ……」
ここは、ポポロクロイスの遥か南に位置する島・クロコネシア。
──時は、さかのぼること数日前。
これから旅立つモンバの前には、この島の仙人のデルボイと、村長がいた。
デルボイが、トンッと、杖をつき、咳ばらいをした。
「よいか、モンバ……。
ワシにもまだよくわからぬが、今、世界に良くないことが起ころうとしている。
お主の使命は、勇者様の乗る船を探し、しかるべき時が来たら、勇者様をこの島へ
導くこと。 この島を出て、立派な船乗りになるよう修行を積むのじゃぞ」
デルボイの重い話なのだが……
「……ZZZ]
寝てるし、まったく聞いちゃいない。
南国の温かい気候で、モンバは立ったままコックリコックリしていた。
デルボイが大きく息を吸う。
「こりゃー、モンバー!! ワシの話を聞けーーーッ!!」
「ギャーーーー!」
びっくりしてモンバが飛びあがる。
なだめたのは、隣でモンバの旅立ちを見守る村長だった。
「すみません、デルボイ様。 モンバは緊張して、昨夜はあまり眠れていないのです。
どうぞお許しください」
「う……うむ」
デルボイはうなづく。
「よし、モンバ、行くのじゃ! この航海、決して後悔するでないぞ。 なんちって★」
しーーーーーん
「とっとと行けーーーーーーいッ!!」
きらりーん★
「ギャーーーーーーーッ!!」
「モンバー。たまには手紙でも寄こせよーーー」
デルボイの怒りの声と、モンバの絶叫と、村長ののどかな声が、クロコネシアの
美しい海岸にむなしく響いた。
「ギャーーーーッ!!」
モンバは、叫びながら飛び起きた。
辺りを見渡す。
見たことのない部屋。そして自分はベットで眠っていたようだ。
「ど、どこッスか、ここは!?」
心臓がバクバクと打ち、心がまったく落ち着かない。
「お目覚めですか?」
「ギャーッ!」
ランバートの声に、モンバはさらに飛び上がった。
「大丈夫ですよ。とって食べたりしませんから」
モンバにそう言うと、ランバートは伝声管に彼が起きたことを告げた。
「ここは、どこッスか?」
「釣られた船の医務室です」
モンバはようやく気絶する前の記憶がよみがえってきた。
『ボス』を目の前にして、気絶して、運ばれたのだ。
ランバートから知らせを受けてすぐに駆け付けたのは、ドノバンとグーリーだった。
「おう、さっきは怖がらせてすまなかったな」
ガハガハと笑って、ドノバンがモンバの背中を叩く。
「安心しな。オレたちは、海賊じゃない」
グーリーにそう言われ、モンバの目は大きくなった。
船の外観に、そして怖い顔の乗組員をみて、それから生きて帰れないとか脅され、
間違いなく海賊船だと思ったのだが……。
「か、海賊じゃないッスか!?」
「えぇ。少し前に廃業したんですよ」
モンバは少しずつ落ち着きを取り戻そうとしていた。
そして、さらに医務室に入ってきたのはアイナだった。
「船長。ベルからサンドイッチをもらってきたよ〜〜! おぉー、本当にワニだ!」
アイナが興味津津にモンバを見つめる。
モンバもモンバでアイナを見つめた。自分と歳もあまり変わらない猫が乗船している
ことに興味津津のようだ。
「おう、モンバ。腹減ってるだろ、食いな」
そう言われ、答える前にモンバのお腹がキュルルルルとなった。みんなに笑われ、
モンバも照れ笑い。大きな口を開けて、パクパクとサンドイッチを食べていく。
「まぁ。それで、だ」
ドノバンが切り出した。
「お前さんが起きたら、ボスの部屋へ連れていくように言われているんだが……」
『ボス』という単語に、モンバは思わずサンドイッチをのどに詰まらせ、咳込んだ。
グーリーが差し出した水を慌てて流し込む。
「む、無理ッス! 怖いッス!!!」
「大丈夫。 ボスは、そんなに怖くないですよ」
「真っ直ぐに生きている素敵な人だ」
「かっこいいよ〜!」
ランバート、グーリー、アイナに言われ、モンバは恐る恐るうなづいた。
どうしても会わないといけないらしい。
「よし! じゃあ、ついてきな」
ドノバンの後について、モンバは医務室を出た。
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