第5話5
ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」


「で、ここが医務室なんだナ」
 読書中だったランバートのもとへ、モンバを連れたダイクが入ってきた。
 暇なダイクがモンバの世話役を買ったらしく、ダイクはモンバに船内を案内していた。

 しかし……モンバは気のない返事ばかり。

 ダイクは、ランバートを見ると肩をすくめた。
「モンバ、少しお話をしましょうか」
 ランバートは本を閉じ、ダイクにうなづくと、モンバを椅子に座らせた。
「オイラ、クロコネシアには帰りたくないッス。せっかく意を決して出てきたのに、すぐに
 帰ったりしたら、みんなの笑い者になるッスよ。この船を降りたら、別の船を探すッス」
「なるほど。あなたはボスに似ているところがある」
 ランバートに言われ、モンバは驚いて顔をあげた。
「オイラが、あの人と似てるって!?」
「まぁ、ほんの少しですけどね」
「しかし、お前さん、拾われたのがこのダカート号で良かったんだナ。下手な海賊に
 会ってたら、売られたりしてたんだナ」
 さらりとダイクが言い、細い目をさらに細くしてモンバを見つめた。見定めているらしい。
 モンバは、ダイクとランバートが話しているのをボーッと聞いていた。
 最初は海賊船だと思っていたダカート号も、海賊船じゃないことがわかり、船員を
紹介され、ダカート号の乗組員が良い人たちばかりだと改めて思った。
 できれば、こんな船に乗って修行をしたい。
 でも……。

 トントンッ


 そのときだ。
 医務室の扉が開かれ、入ってきたのはグーリーだった。
「おぉ、モンバ。こんなところにいたのか」
「どうしましたか、グーリー?」
「あぁ」
 グーリーはモンバに近づくと、ぐいっと顔を近づけた。

あああああ「おい。仕事をやるから、甲板に出ろ」
   
ああ「し、仕事ッスか?」

「そうだ。話は船長に聞いた。ボスに乗船を拒まれたそうだな」
「……また別の船を探すッスよ」
 そう言うモンバに、グーリーは、胸を張って答えた。
「それまでの間、オレが面倒をみてやろう。次の港につくまでの5日間、きっちりと仕事を
 こなせたら……オレからもう一度お前さんの乗船をボスに頼んでやろう」
「ほ、本当ッスか!?」
 ランバートは小さなため息をついた。
「しかし、グーリー。ボスは、一度決めたことは覆さない人ですよ」
「でも、放っておけないだろう。 モンバ、お金を払って客としてこの船に乗るわけじゃない。
 だったら、5日間だけでも、船乗りとしてこの船で経験を積むんだ」
 グーリーに言われ、今まで生気のなかったモンバの目が輝いた。
「オイラ、やるッス!」
「よし、甲板に行くぞ」
「わかったッス」
 グーリーは、一番大事なことをまずモンバに教えた。

「モンバ、海の男の返事は『アイアイサー』だ。覚えとけ」

「アイアイサー!」

 元気を取り戻したモンバを見て、ダイクとランバートは胸をなでおろした。









 そして、夜も深まったころ……。

「海は広いなー大きいなー♪」
 なーんて、やけくそで歌を歌いながらカーティスは見張り台に立っていた。
 伝声管全開で、みんなへの嫌がらせにと歌っていたのだが、たぶん、みんな管に
フタをしてぐっすり眠っているだろう。

「カーティース!!」

「ん?」
 自分を呼ぶ声にカーティスは下を覗き込んだ。
 なんと、モンバがマストを登って来たのだ!
 カーティスは念のため伝声管にフタをすると、モンバに怒鳴った。
「なにをしに来たんだ!?」
「オイラも見張りを手伝うッスよ」
 呆れたようにカーティスは手を振った。
「私のベッドが空いているだろう。どうせ10日連続夜勤だし、使えばいい」
「オイラ、視力はいいッスよ!」
「……」
 猛アピールされて、カーティスは渋々うなづいた。ま、手伝ってくれるというのだ。
この先も長時間の見張りだし、自分の体力を考えると、ありがたく申し出を受けて
おいたほうがいい。
 食堂から持ってきていたリンゴをモンバに手渡す。
 2人でかじりながら、長い夜は更けていく……。
 
 夜は更けていく……。

「……ZZZ]



「寝るなよ」

 




    

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