第5話6
ダカート号だよ、全員集合ーーーッ!」


 その後、モンバはすすんで仕事を手伝った。
 見張り番や甲板の掃除、積荷のチェックに、みんなとロープを引っ張って帆を張ったり
たたんだり、機関室に足も運ぶし、お皿洗いだって頑張った。

「へぇ、お前の縄の結び方って変わってんなー」
 甲板でモンバと一緒に縄のチェックをしていたビリーが、モンバの手さばきに興味津津で
寄ってきた。
「クロコネシアじゃ、こうやって結ぶッスよ。丈夫なのに、ほどきやすいッス」


「……」
 モンバとビリーが仲良く話している姿を、エレナは離れたところから眺めていた。
「ボス。明日の昼には、次の港に到着します」
 背後から、わかりきったことを改めてランバートが言う。
「わかってるわよ!」
 モンバから視線を外し、部屋へ戻ろうとするエレナにランバートは話を続けた。
「彼もあなたと同じですよ」
 そう言われ、エレナは足を止めた。
「彼もまた 1人でこの大海原に旅に出たのですよ」
「彼はまだ子供よ!」
「子供が海に出てはいけないなら、若い女性だって普通1人で海に出てはいけないでしょう?」
「それ私のことを言ってるわけ?」
「1人で海に出るということは勇気のいることです。あなたならわかるでしょう?」
「彼は家に帰るべきよ。 もしかしたら家出かもしれない! 素性がわからないわ」
「この船の半分以上の者は素性の知れない者たちですよ。モンバはウソを言っているようには
 みえません。本当に修行する船を探しているのでしょう」
「ま、確かに……そうね」
 エレナはぼんやりうなづいた。
 ランバートは、エレナの心が波のように揺れているんだと感じた。
「今晩、グーリーがボスに大事な話をしに行くと思いますが、どうぞ寛大に。我々はあなたに
 従うのみです」
「私は……」
 エレナが何か言いかけた時、上から声がかかった。

「おーい。モンバー。見張りを変わってくれーーーーーー」

 カーティスだった。
 エレナが見張り台を見上げる。
「ちょっと、カーティス! あなたの仕事でしょう! 人に押し付けないの!」
「30時間連続で見張り当番してて、うちのボスは仮眠の1つもくれないんですねぇ」
 嫌味をこめたカーティスの一言に、エレナが押し黙る。
 モンバは縄をビリーに手渡すと、ひょいっとマストに登った。カーティスのいる場所まで
あっという間にたどりつく。
「へぇ。 あの子、意外と身軽なのね」
 エレナが感心したように笑う。



「悪いな。少し休憩したら戻ってくるから、それまで頼む。……寝るなよ」
「アイアイサー!」
「ははっ、さまになってきたな」
 カーティスが大きなあくびをする。目の下にくままで作って、お疲れモードだ。
 高いところから360度海を見渡し、モンバはうなづいた。
 この場所の見張りが一番お気に入りらしい。
「!」
 モンバは遠くを見つめた。目を細める。
「カーティス! ほらあっち! あっちから何かが来るッス!」
「なに!?」
 カーティスの表情が変わった。双眼鏡から、モンバの指さす方向に目を凝らす。
「エドガー! 2時の方角、ものすごい勢いでこっちに何か来るぞ!」
 伝声管に叫ぶ。

 モンバが大声をあげた。

「ギャーーーーーッ!  
   モンスターが来るッスーーーーーー!!」



 全員に緊張が走った。

 



    

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