第8話3
「歓楽都市ガバスッ! うちのボスとカジノの裏ボス」
「な、なんで、うちの娘がこんなところにいるんだッ!?」
ガーーーーンッ!
「た、確かピエトロからの手紙によれば、『伝説の剣を探しに海へ旅立った』と
あったが、こんなところで、しかも、ガラの悪そうな連中と何をやってるんだーー!」
──彼の名前はパウロ・パカプカ。
ポポロクロイスの先代の王様であり、ピエトロとエレナの父親である彼は今、妻のサニアと
一緒に竜の国で老後を送っている……
はずなのだが!!
彼は息抜きに、たまにガバスに遊びに来ているのであった!
パウロは、スロットに隠れながらエレナの様子をうかがっていた。
「それにしてもエレナは素敵なレディになったなぁ。若かりし頃のサニアを思い出すわい」
鼻の下をのばして、娘にうっとりのパウロ。 はたから見れば、怪しいおやじだ。
しかし、そこに魔の手がッ!!
「ヘイヘイ、そこのお姉ちゃん、一緒に遊ばなーーーーい?」
「あら、私のこと?」
(ギャー!! ナンパ野郎キターーーーーーーーーーッ!!)
どうしようどうしよう! このやろう、出て行ってあの男を殴り倒してやろうか!
嫁入り前の大事な娘になに声かけとんじゃい!
と、思ったところに、
「ヘイヘイ、そこの兄ちゃん、オレと一緒に遊ぼうぜ♪」
「ぎゃあああああああああ!」
エレナが従えていた大柄の男がナンパ野郎を肩にかついで人ごみの中に消えていく。
「ボス、ガードが甘いです。ここでは十分気をつけてください」
「んもう。私なら大丈夫だったのに……」
ほっ。
パウロは、安堵の胸をなでおろした。
「ふぅ、危ない危ない」
「ねぇ、おじさん!」
と、そのとき、パウロに背後から声がかかった。
「ん、なんじゃ?」
「おじさん、隣のスロット使ってもいい? ここしか空いてなくてさ」
(ギャー! エレナの怖いお友達キターーーーーーー!)
「あ、あぁ。どうぞどうぞ」
心臓ばっくばっくのパウロは、冷静さを装うと、エレナを見るのをやめて、怪しまれない
ようにスロットに向き直った。コインを入れて、ハンドルを引く。眼の前の絵柄がぐるぐると
回転し、いつもの動体視力を使って絵柄を合わせようとするのだが、今日ばかりは
全くうまくいかなかった。
パウロは隣の2人の男を横目で観察し始めた。
さて。
変なおじさんの隣に2台分の空きスペースを見つけたカーティスとランバートは、
意気揚々とスロットの前に座った。
「よーし、大当てしてアイにゃんに、いい景品を持って帰るぞー♪」
「では、私はモンバのためにコインを稼ぎますか」
カーティスは、手をあげて近くのバニーガールを呼んだ。
「おねーさーーん! こっちにビール2つ、よろしくーーー」
バニーガールは、笑顔で手を振り、ビールを取りに引き返していく。
「ところで……」
ランバートは、スロットの手を止めて、カーティスにたずねた。
「そういえば、なんでボスはカジノのコイン無料券なんてお持ちだったんですか?」
「あれ? お前、あのとき(8−1話)、ボスの部屋にいなかったのか?」
「えぇ。まさかボスがカジノに行く許可をくださるとは到底思ってませんでしたから。
絶対に賭け事とかお許しにならない人だと思ってましたが……」
カーティスは、鼻で笑ってスロットのレバーを引いた。
「あぁ、それが、ボスのお父さんが、すっごくカジノが大好きなんだってさ!
だからポポロクロイス城の棚の引出しに無料券が普通に入っていたらしい。航海に
出る前に持ってきたんだと」
ズルッ
その話を聞き、パウロは、思いっきり こけた。
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