第8話6
「歓楽都市ガバスッ! うちのボスとカジノの裏ボス」




 ガバス利き酒大会。
 お酒を飲み、その銘柄を当てるという大会で、すべてにパーフェクトだったエドガーは
見事に優勝を果たした。優勝賞金100万円ということで、ダイクは眼を輝かせ、エドガーに
抱きつく。壇上で、2人はお客のいい見世物になっていた。
 司会進行役の女性がエドガー背中を押す。
「それでは、表彰式に移りたいと思います。エドガーさんに優勝賞金100万円の授与です!」
 ひゃっくまんえん!
 エドガーの手に100万円が渡される。
 貧乏ダカート号にとって、これは大きな収入だった。しばらくは安定した生活が送れる。
財務大臣ダイクはそれはもう嬉しくて仕方がなかった。
 
 と、そこへ。

「エドガー、ダイクーーー! なにやってんだ、帰るぞーーーーーー!!!」
 タイミングよく飛んできたのは、ドノバンの大声。
「ど、どうしたんだナ!?」
 壇上から声のしたほうに視線を向け、ダイクは細い目を見開けた。仲間たちがカジノの警備員に
追われている。
「船長たち、何をやってんだナッ!?」
「お前たちも、あいつらの仲間かッ!」
「ギャーーーーッ!!」
 警備員たちが壇上のエドガーとダイクを一気に囲んだ。ジリジリと包囲網を狭める。彼らは背中
合わせに震えながら身構えた。ほろ酔い気分だったエドガーも一発で目が覚めたようだ。
 これはまずい、捕まる!
「ダイク、どうしましょう?」
「むむ……こうなったら……」
 ダイクは、100万円をバッと天井へ思いっきり放り投げた。
 天井付近で100万円の包みがほどけ、紙吹雪のようにお金が酒場にヒラヒラと舞う。
 その場に居合わせた全員が天井を仰ぐ。 そこに出来た一瞬の隙。
「よし、エドガー、今のうちなんだナ!」
 2人はうなづいた。

「少年少女よ大志を抱け!」
「世の中、お金がすべてじゃないんだナ」


「「では、アデューッ!!」」
 捨て台詞を吐き、2人は壇上から飛び降りた。
 ぴゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー→
 2人の逃げ足は、とてつもなく速かった!!


 




 ガバス・カジノを脱出したエレナたちは、港までを全力疾走していた。息切れしたダイクが、
グーリーに担がれている。
「なんで私たちが逃げなくちゃいけないのよ! 何も悪いことなんてしてないわ!」
 納得できないエレナだが、仕方なくみんなと一緒に走っていた。
 後ろを振り返ると、たくさんの警備員が追ってきている。
「おい、全員いるか!? しんがりは誰だ?」
「私とランバートです。後ろはお任せください」
 カーティスの声が後ろから聞こえ、ドノバンは安心したようにうなづいた。
 港に連絡が行き、封鎖されていたらと不安だったが、先回りされることなく全員ダカート号へと
たどりつく。
「あっれー? 船長、おかえりー」
「早かったッスね。おみやげはーーー?」
 甲板で見張りをしていたアイナとモンバが出迎えるが、全員、2人を相手にすることなく、素早く
持ち場についていく。
「野郎ども、すぐに出航だーーーーーッ!!」
 ドノバンの怒鳴り声が響く。こうなることがわかっていたかのようにガストンがエンジンを動かし
始めたので、アイナも慌てて機関室に走って戻って行った。
 状況がよくわからないモンバもグーリーについて出航準備にとりかかる。
「甲板全員、伏せて!!」
 マストに登っていたビリーが大声で叫んだ。途端に、ダカート号に警備員が放った矢が
降ってきた。

 カーティスとランバートと一緒に後方を走っていたエレナが、ダカート号に乗る寸前で
立ち止った。
「もう我慢できないわ!」
 振り返り、剣を引き抜く。対決するつもりだ。慌ててカーティスとランバートが引きとめた。
「やめてください、ボス」
「ここは出航してしまいましょう」
「でも……!」

 その時だった。

ザッ


「やつらはワシが引き受ける。お前たちは出航するのだッ!」



「あ、あの……あなたは?」
 エレナが突然目の前に現れた仮面の騎士にたずねる。
「名乗るほどのものではない。さぁ、早く行くのだ!!」
「ありがとうございます!」
 エレナは、騎士に頭を下げると、ダカート号に乗り込んだ。
 もう少しエレナと会話がしたかったが、これでいいのだ、と仮面の騎士はぐっとこらえた。
 エレナの後をカーティスとランバートが追う。仮面の騎士とすれ違いに2人は言った。
「じゃあ、後はよろしくお願いします、お父さん」
「娘さんのことは、お任せください」

「うむ、頼んだぞ。 ……って えっえぇぇぇぇぇーーーーーーーー!?」
 正体ばれてるーーーーー!? 仮面の騎士ことパウロは振り返った。

 ダカート号はすでに港から離れるところだった。




 警備員たちが仮面の騎士を見て立ち止った。
「裏ボス……。あいつらの味方をするのですか?」
「まあなあ。今回はそうさせてくれ。どうしてもというならワシが相手になろう。ワシもまだまだ
 いけるぞ。はっはっはっ!」
 パウロは笑って剣を振り回した。
 警備員たちは、肩をすくめ、パウロと共に遠ざかるダカート号をただ黙って見つめるのだった。

 




    

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