第9話2
「星に願いを。スターマン2010」




 ダカート号のそばに星が落ち、その衝撃で、転覆しそうなほど船が激しく揺れた。
水しぶきが甲板に降り注ぎ、全員が床に伏せる。
「みんな大丈夫!?」
 ある程度揺れがおさまり、エレナは立ち上がった。宴会場だった甲板は水浸しになり、
テーブルや食器が無残に散らばっている。
「ボス、全員無事です。朝になったら点検しますが、ま、船に問題はないでしょう」
 安心させるようにドノバンが答える。エレナがうなづく。
「それにしても一体何なの!?」
「モンバの歌のせいで星が落ちてきたんだナ!」
「なんて破壊力なんだ!」
「オイラのせいッスか!?」
 モンバが弁解しようとした時、船首にいたアイナが大きな声をあげた。
「みんなちょっと来てー! 何か浮いてるよー」
 みんなが船首へと集まった。アイナの指差す先に、人が浮いているのだ。その人は、気絶している
らしく、仰向けに浮いており、ピクリとも動かなかった。
 さーっと、みんなの血の気が引く。
「ちょっと大変!!」
「どざえもーん!」
「こら、ビリー、変なこと言うんじゃねぇ。 グーリー、灯りをともせ! モンバは網を持ってこい!
 助けるんだ!」
 ダカート号は、流れ星どころではなくなった。慌てて海に浮かんでいる人を救出する。
ランバートがお腹を押すと、その人は、ぴゅーっと口から海水を吐き出し、すぐに意識を取り戻した。


「みなさん、こんばんわ♪ 僕の名前はアステールです」


「はぁ……アステールさん……」
 ポツリとエレナが呟く。




……というか、こいつ何者ッ!?

 みんなの警戒を気にすることなく、アステールは話し始めた。
「なんだかおもしろおかしな願い事がたくさん聞こえてきたので、やってきました」
「ってことは、この人、神様!?」
「オレらの願い事を聞いてくれるんだナ!!」
「お酒〜!!」
「違いますよ。僕は神様ではありません。僕は、この世界に興味があって、あそこから
 来ました」
 と、アステールは空を指差した。みんなもつられて空を見上げる。満天の星が輝き、
その時、キラリと流星が空を横切った。
「星……あなたは星から来たのね、えぇ、わかったわ」
 エレナはうなづいた。
「ボス、わかってないでしょう?」
 そうドノバンに聞かれ、エレナは苦笑した。
「う、うーん、そうね。アステールさん、いきなり現れて、あなたは何者なの?」
「だから、僕はこの世界に興味があったんです。みなさんは御存じですか?
  本当は、世界は丸いのですよ?」


           !?


  
   なにを言いだすんだ? この人は!?

 そう言ったものの、彼は考えるように腕を組んだ。
「しかし、この世界はどうも違う感じがする。なので、ちょっと寄ってみたんです」
「あの……丸って、なんの話???」
「みなさんの住む、この星の話ですよ」
 と、アステールは手を広げた。

  「だいたい、世界はこうじゃないのか!?」

   『ダカート号☆羞恥心』さんたちの世界像。

「なぁ、そうだよな。ランバート」
 と、ビリーに話を振られ、ランバートは困ったようにあごに手を当てた。
「そうですねぇ。私も平面だと思いますが、『大きな蛇と象と亀の上に世界がある』という
 説も聞いたことありますし……」
「なにそれ超面白い!!」
 ランバートの話にアイナが飛びつく。
 この世界の「果て」には諸説がいろいろあるようだ。
 目の前にいるアステールは、この世界が「球」なのだという。
 地図のその先がどうなっているかなんて、誰も知らなかった。その先に、新しい世界が
待っているのか、それとも行き止まりになっているのか、丸いのなら、一周すればまたもとの
場所に戻ってくることができる。
 エレナは甲板を見渡した。
「あら、うちの専門家に聞けばいいじゃない。カーティスはどこにいったのよ?」
 そう言うエレナに、全員が心の中でツッコミを入れた。
(((((あんたが、前頁でグーで殴って気絶させ、医務室に運ばれたんだろ))))))
 だが、そういうことはきれいさっぱり忘れるエレナは、本当に何も悪いと思っていないらしい。
「カーティスを起こしてきます。待っててください」
 そう言うと、ランバートは階段を降りて行った。
「ボスは、世界はどうなってると思うッスか?」
 モンバに聞かれ、エレナはキッパリと言った。

「そうね。私が昔、父様に教えてもらった話では、世界はこんな感じになってるのよ!」


         エレナ的、世界像(夢幻魔王編)

「ボス……それは呪われてるッス」
 そんなダカート号クルーをよそに、アステールは闇の先、海の果てを眺めていた。
「この世界はおもしろいですね」





    

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